『にじいろガーデン』


小川糸さんの作品。

小川さんにしか書けない作品だと思う。

一章ずつ語り手が変わっていくのも良いなと思った。


作中に出てくる↓の憲法がとても素晴らしいと思った。


「自分には決して嘘をつかない。

一日に一回は、声を上げてげらげら笑う。

うれしいことはみんなで喜び、悲しいことはみんなで悲しむ。

絶対に、無理はしない。

辛かったら、堂々と白旗を上げる。」


私は、ニー二が目を覚ます日が来ることを待ち望んでいる。


印象に残っている文

手のひらに、秘密の小鳥を預かっている気分だった。

「さっきの卵焼きは、泉さんが、わたしのためだけに一生懸命作ってくれたものでしょう。だから、おいしかったの。すっごくまずかったけど、それもふくめてあ、チョコにとっては、世界で一番、おいしかったの」

「ねぇ、泉ちゃん教えて。正しいって、何なの?誰にも迷惑なんかかけていないのに、どうして自分に正直に生きちゃいけないの? レズビアンだってことを、なんで親から全否定されなくちゃいけないの? もう、こんな息苦しい所になんかいたくない」

「泉ちゃんは、本当に怖がりだねぇ。でも、大丈夫だよ。向こうはただ、わたしたちのことを観察しているだけだから。ここに住む家族としてふさわしいかどうかを、見極めようとしているんだと思う。だって、わたしたちより木の方が、ずっとずっとこの土地に長く暮らしている先輩だもの。きっとわたしたち、今、こだまに試されているの」

結局のところ、事実婚だなんて悠長なことを言っていられるのも、異性愛者だからだ。

家族というものは、きっと最初から家族のわけではなく、毎日毎日、笑ったり、怒ったり、泣いたりしながら、少しずつその形が固まっていくものだと思う。

「男と女は認められるのに、男同士、女同士だと、どうして急に変な目で見られるの?」

長年連れ添った夫婦を、空気のような存在と表現することがあるけれど、泉ちゃんはまさに、わたしにとっての空気そのものだ。目には見えないけれど、ないとすぐに死んでしまう。

あまりにも、存在感がないというか、頼りなかった。上から消しゴムでこすったら、そのまま消えてしまいそうな人だった。

好きな人と共に歳を重ねること、家族が平和に暮らすこと。ありきたりだけれど、それ以上の贅沢があるだろうか。

「事実は、時に間違うこともあると思うんだ。でも真実は、どんなに世の中が変わっても、普遍的なんだよ。大事にしなくちゃいけないのは、真実の方だと思うんだ」

「いくら隣の花の色の方がきれいだなぁ、って羨んでも、自分に与えられた色を、自分の好きなように変えることはできないもの。その色で、精いっぱい生きるしかないでしょう?」

「話を聞くなんて、誰にもできそうだけど、実はものすごく難しいんだ。辛いことや悲しいことは、ずっと自分の胸の内側に留めておくと苦しくなるけど、それを誰かに話して共有することで、薄まったり弱まったりするんだよ。」

「結婚ていうのはね、たぶん、幸せ探偵団を結成するみたいなものよ。時には髪を振り乱したり、大きな敵と闘ったりしながら、それでも幸せのために前に進んでいくの。ふたりにとっての幸せは、同じものなの」

「人って、生まれてくる時に、同じ量の粘土を与えられているんじゃないかと思うんだ」

「残されるって、本当に辛いよね」
カカが、ズボンについた土を払い落としながら、しみじみとつぶやいた。
「楽しかったり幸せだった思い出を瓶に保存しといて、それをちびちび出してきてはさ、残りの人生を食いつないでいかなくちゃいけないんだもの」

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