『県庁おもてなし課』

有川ひろさんの作品。

過去に一度読んだことがある。最近になってもう一度読んでみると、友人の話などから役所と民間の仕事の進め方について聞いたため、より親近感を持って読むことができた。
高知県はまだ行ったことがないので、いつか行ってみたい。
多紀は何手も先を見据えて行動していた。自分がその場にいたら多分同じことはできないと思ったので、すごいと感じた。
「おもてなし課」が今は無くなってしまったのが寂しい。


印象に残っている文

誰が言ったか「基本的に人間が一対一で渡り合って何とかなりそうな動物しか置いていない」動物園。草食獣をメインに動物とのふれあいをコンセプトにしたーーというのは聞くだに苦しい言い訳だ。

ーー彼らは実に、悲しいほどに、どこまでも「公務員」であった。

「名刺ってさ、何で名刺なのか知ってる?」

吉門は不意に話題を変えた。「名前のとおりだよ」「名前のとおり……?」「名を刺すって書くだろ。ここぞってとき、狙った相手に自分の名前を確実に刺す。相手の意識に。そのための道具なんだよ」

「行政は変化を嫌う。特に地方は保守的だ。現状を維持できたらいいって感覚のままじわじわジリ貧になってることに気づかない。気がついたら財政破綻してるって寸法だ。破綻が見えてから慌てたって手遅れだ、そのときにはもうどうにもならない。」

高知の寿司は、寿司飯にゆず酢を使って白ごまなどの薬味を忍ばせているところが独特である。

「客の印象に一番強く残るのは生理的な欲求よ。要するに食事と排泄じゃ。」

行政ではなく、行政内の個人に対して訴訟を起こせる現在のシステムでは、失敗した行政プロジェクトの賠償責任を個人に求めることが可能だ。

「客ってのはタダだったら何でも持ってってくれるわけじゃないよ。自分の興味があるものしか受け取ってくれない。役に立たないものは単なるゴミだ。いくらタダだからってゴミをもらってくれる人はいないだろ」

「本屋さんって本のプロじゃないですか。そのプロがわざわざ手書きのポップを作ってまで売りたいなんて、それだけで『きっとおもしろいんだろうな』って感じでしょ? 特に本を読む人は本屋さんのそういう熱にすごく弱いんです」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?