『逆玉に明日はない』

楡周平さんの作品。

四葉商事出身のサラリーマンである昭憲は、名門老舗食品メーカーの堂面家に婿入りする。

子どもができたものの相続税対策のため養子縁組に出されてしまい、跡継ぎが生まれたことによって昭憲は離婚を迫られる。


次女の華子の立場を考えると、お金があっても幸せとは限らないということをよく感じた。

『ぷろぼの』でヤクザに一万円を渡した伝説の人というのが出てきたが、まさかの本人登場にびっくりした。

相続税対策のために養子縁組をするという方法を知らなかった。


印象に残っている文

しかし、仕事の内容といえば下働きで、自分の裁量でビジネスを行うためには、しかるべきポジションをものにすること。そのためには実績を上げるのはもちろんだが、上司によく仕え、引きを得るしかないのだ。

「堂面家において、当主は絶対的存在です。ですから、意見を求められた場合は別として、当主のお言葉には絶対服従。拒否、反論は許されません。指示を受けた場合は、『仰せの通りに』とおこたえする。これが唯一の返事です」

ドンペリのロゼ。俗にいう“ピンドン”だ。ドンペリには幾つかの種類があるが、一般的なものの倍の値段がする代物だ。

サラリーマン人生の危機に直面した当事者が、上司の責任追及から逃れる手段はふたつある。ひとつは、不可抗力であることを上司に理解してもらうこと。もうひとつは、誰かに責任を転嫁してしまうことだ。

「時間の浪費って、最高の贅沢なんですよ。ほら、こっちじゃベランダに椅子を並べた夫婦が、地平線に沈んでいく夕日をじっと見詰めている姿をよく見かけるでしょ? クルーズ船の旅だってそうでしょ? 日本人は、やたら船内を駆けずり回ってイベントに参加するけど、欧米人はデッキの椅子に寝そべって、ただ海を眺めていたり、昼寝をしたり、滅多やたらと動き回ったりしないでしょ?」

裁判が始まってから三ヵ月。日本ならば年単位の時間を要するところだが、アメリカの裁判は早い。何しろスピード違反でさえ、ドライバー本人が裁判所に出廷しなければならないのだ。


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