『たてがみを捨てたライオンたち』

白岩玄さんの作品。

妻が妊娠した直樹。離婚経験のある慎一。アイドルオタクの幸太郎。


体調不良でぼーっとしていたときのクレーム処理が上手くいって、それ以降はクレーマー対応を任せられるようになった幸太郎が可哀想だと思った。

自分の周りの人の「たてがみ」は一体何だろうかと考えてしまった。

仕事と家庭を両立することが理想であるが、自分にもどちらを優先するのか悩むときも来ると思う。

パートナーとのコミュニケーションの取り方が大切になってくると感じた。


印象に残っている文

一人暮らしの女の家は、なんでこんなに白を基調にしているんだろう。壁の色はともかくとして、家具や電化製品までやたらと白が多い気がする。

でもどんなに顔に出さなくても、誰が有能で誰が無能か全部わかってしまうのが企画会議だ。社内の人間の評価というのは恐ろしいくらい共有されてしまっている。

仕事ができる男の人には、戦場で戦う兵士のような疲労感と孤独の匂いが染みついている。

きょうだいというのは奇妙なものだ。他人なのに他人ではなく、まったく別の生き物でありながらも、どこかでつながりを感じている。

「でもさ、おかしいと思わない? 男の人は子どもが生まれても何の障害もなく仕事ができるのに、女の人にはそれが許されないんだよ? 産んですぐ職場復帰したら、子どもが可哀想、母親としてどうなんだ、って思われるしさ。子どもは二人のものなのに、なんで一方だけが我慢しなきゃいけないのかな」

「可愛すぎる……なんか七夕の後処理してるみたいじゃないですか?」

「本人は気づいてないことが多いけど、大抵の男の人には『見えないたてがみ』が生えてるの」中略「それは経済力とか、肩書きとか、学歴とか、運動神経、あるいは仕事ができるかどうかだったりもするんだけど、その人が他人より勝ってると思ってるところを見つけ出して肯定してあげるとーーつまりはそれがたてがみなんだけどーー男の人はリラックスするの。口に出して褒めなくても、心の中で受け入れるだけでいいのよ。それだけで男の人って居心地が良くなるものなの」

「男の人って本当に勝ちたがってるの。どれだけ自分はそういうものとは縁がないみたいな顔をしてても、結局は周りと比べてるし、自分が強いかどうかを気にしてる。まるでそれがないと生きていけないみたいにね」

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