『限界病院』

久間十義さんの作品。久間さんの作品は初めて読む。

北海道にある富産別市にあるバトラー記念病院に転任した医者の健太朗の物語である。


入れ替わりが激しくなると、看護師や他のスタッフの勤労意欲が下がるというのが難しい問題だと感じた。

健太朗とまゆみは、夏の終わりのような別れ方をしたと感じた。




印象に残っている文

「昔はアイヌの女の人は、口のまわりに刺青をしなければ一人前の女性って認められなかったんです」

「きょう日、医療訴訟を抱えない医者なんて珍しいってもんだよ。犬もあるけば棒にあたり、外科医がオペすりゃ訴訟にあたる。大丈夫だよ。何のために高い医師の賠償責任保険を掛けていると思っているんだ? こういうときの備えのためだろう、ん?」

つまり彼女たちから軽く見られたり、敬遠されたりするようだと、医師としては失格。看護師たちとはあくまでも互いを認めあって、自分には出来ぬその仕事に感謝しつつも、それなりの信頼を医師は勝ち得なければならないのだ。

すっかり自分の心の動きを信頼して、一片の曇りもないと信じていた相手への想いが、ふとした瞬間にまったく意味をなさないと悟ったときの絶望感。自分自身に落胆して、必死にそんな不実な自分を糊塗しようとするときの徒労感……。


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