『七十歳死亡法案、可決』


垣谷美雨さんの作品。

義母の介護をほぼ一人で行う長男の嫁の東洋子。東洋子の息子は転職活動に失敗してニートで、娘は実家をすでに出ている。夫は仕事を辞めて介護を手伝うのかと思いきや、海外旅行へ行ってしまう。東洋子はある日限界が来て、家出してしまう。

もしこの法律が可決されたとき、一番困るのは65歳くらいの人ではないだろうか。急にあと5年で死亡するとなると、人生プランがかなり変わってくると思う。

最終的に東洋子が家出したことにより、家族が良い方向に変わっていくのが良かった。

いつまでも健康でいるのは難しいと思うが、できれば健康なまま死を迎えられたらと思った。

印象に残っている文

おむつ替えのときには余計なことは一切言わないようにしている。なるべく無言でいるのがいい。人におむつを替えてもらうときの屈辱感といったらどうだろう。

十五年の人生は短いけれど、介護の二年は長い。すごく長い。

「正樹、健康っていうのはね、なくして初めてそのありがたさがわかるもんなのよ」

男の人というのは、女の演技を見破れない生き物なのだ。

「いや、それが……女房が死んでから日記が出てきたんだ。俺に対する恨みつらみがびっしり大学ノート三十冊。夫婦円満だと思っていたのは俺の方だけだったらしい」

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