『校長、お電話です!』


佐川光晴さんの作品。佐川さんの作品は初めて読む。

母校の中学校の校長として赴任したシバロクこと柴山緑郎。しかし母校は問題が山積みで、シバロクはそれらを解決しようと試みる。


シバロクが全校生徒の名前と顔を覚えて挨拶するのが、すごいと思った。

校内でゴミを散らかした子たちが、きちんと会話のできる子たちで驚いた。

島村さんの行動力がすごいと思った。

校長先生が主人公の話を初めて読んだ気がする。


印象に残っている文

「中略 本当に勉強ができるヤツは、どんな環境にいたって伸びるんだ。子どもを過保護に扱うことで、心身が鍛えられる機会を逸することのほうを恐れろよ」

「中略 休職中の先生は本当に真面目な方だと思うんです。でも、ご自分にとっても、その生徒にとっても、人生はまだまだながいわけで、たくさんのひとたちとも付き合うわけですから、そのときそのときで全力を尽くしながらも、その成果がいつどこで実るのかは誰にもわからないという現実の厳しさに慣れていくしかないんじゃないでしょうか」

シバロクのやり方は、とにかく話を聞いて、その先生が抱えている問題を共有する。そうしておけば、「その後はどうです?」といった言葉が自然に口をついた。

「女子にとって、男子より体が小さいってことは決定的なのよ。身長が同じくらいだとしても、男子のほうが筋肉があるし、骨格も頑丈でしょう。和気あいあいとおしゃべりしているうちはともかく、ちょっとしたことで意見が食い違ったりすると、男子の体や低い声が威圧感をもって迫ってくるの。おとうさんは意識したことがある?」

自分が担任するクラスをまとめて、受け持つ教科の授業を成り立たせることは、教員にとって何よりも大切だ。しかしそれだけでは、ともすると自分が関わる生徒さえ良ければいいという閉鎖的な態度に陥ってしまう。

「損して得取れとはよく言ったものでね。校長にとっては、現状はあまりうまくないと感じているくらいがちょうどいいんだ。何故かというと、力量のある先生方ばかりだと、安心は安心だけど、お互い敬して遠ざけることになっちゃうだろ。でも、未熟な若手が数人いれば、みんなが気にかけてアドバイスをしたり、フォローをしたりするじゃないか。そして、今度は若手の成長がベテランを刺激する。生徒はどうしたって若い先生が好きだからね。好かれているうえに教え方も上達してくれば自信が生まれる。ベテランだってうかうかしていられないさ。教員同士が切磋琢磨していくことで、自ずと生徒たちの学力は伸びていくってわけだ」

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