『家族シアター』

辻村深月さんの作品。以下の話が収録されている。

「妹」という祝福、サイリウム、私のディアマンテ、タイムカプセルの八年、1992年の秋空、孫と誕生会、タマシイム・マシンの永遠


「私のディアマンテ」では、意外な展開に驚いた。

「タイムカプセルの八年」が一番好きな話である。子どもたちの夢を壊さないために、タイムカプセルを守ってあげた親父の会が素晴らしいと思った。また、子どもたちが小学校を卒業しても続いていく仲というのが良いなと感じた。

「孫と誕生会」で孫のことを見守るおじいちゃんが、とても良いと思った。久しぶりに竹とんぼで遊びたくなった。

「タマシイム・マシンの永遠」では、ドラえもんの秘密道具をきっかけに会話をして、結婚に繋がったというのがとても素敵だと思った。「タマシイム・マシン」をそもそも知らなかったので、新しくひみつ道具を知ることができて良かった。


印象に残っている文

「真面目」というのは、随分便利な言葉だ。大人が使うとまるで褒め言葉のように聞こえる。

ダイエットとコスメに目覚め容姿に磨きをかけると、方向性さえ間違えなければ、女は努力の跡そのものを評価してもらうことができる。

「暗い」は「真面目」以上に根が深い、マイナス面しかない言葉だ。

中学生女子のケンカや仲間外れは流行り病のようなものだ。かかっていたことすら、いずれ忘れてしまうような。

『自分は親だから、謝らなくてもいいって思ってるよね。そんなふうに血のつながりは絶対って思ってると、いつか、痛い目見るよ』

モンスターペアレントとか、クレーマーとか、言葉にするのは簡単だが、世の中には私のように事なかれ主義なのに、仕方なく文句をつけにいかなければならない人たちだっている。相手に非があっても、どうしたら丁寧さと穏やかさを失わず、事を荒立てないで済むかばかり考える、貧乏くじを引くようなクレーマーが。

家族というのは、どういうわけか、実の息子である孝治の名前を差し置いて、一番小さくてかわいいものを中心に考えられるようになるのだ。そうやって回っていく。

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