『クローバーナイト』

辻村深月さんの作品。

共働きの子持ち夫婦が保活やお誕生会など、さまざまな問題に向き合う物語である。

お誕生日会の話が特に印象に残っている。毎回プレゼントなどを用意しなければならないとなると、とても大変だと思う。また、会場となる家の準備も大変だ。暗黙の了解みたいなものが勝手にできてしまうのは、やめてほしいと思う。

「クローバーナイト」という言葉の意味が素敵だと感じた。

保活は想像以上に大変だということがよく分かった。保育園に入るために離婚をするという裏技があることを初めて知った。


印象に残っている文

子どもを保育園に預ける親にとって、“お迎えを忘れる”ことほど怖いものはない。

志保に代わって他の母親たちと接していると、彼女たちの条件反射のように口を衝いて出てくる言葉の、そのそつのなさに驚く。軽やかに褒め、軽やかに謙遜し合う。

女性陣の社交性に比べて、男の社交性のなさはおそらく彼女たちから見れば異常なほどだ。裕からしてみると、初対面でもその日のうちから旧知の友人同士みたいなノリで話せる志保たちの方が驚異に値するが、ただ会うだけで何時間もトークで盛り上がれる女性陣に比べて、男性は裕の経験上、麻雀とかゴルフとか、何か共通の“やること”がないと新しい友人関係は間がもたないし続かない。

「だけど、毎日生活する中で、陰口みたいな雰囲気が蔓延して、それが本人にも伝わっちゃうようなのは絶対、嫌。気分が悪いよ」

保活は、病気や仕事などの関係で、子どもが「保育に欠ける」状態にあることを役所に証明するところから始まる。

「普通にできればいいと思っているだけなのに、都会だと、それがこんなにも叶わないものなんですね」

ーー人生の前半は親に台無しにされ、後半は子どもに台無しにされる。

他から見てどれだけ異質でおかしなことだったとしても、自分が属している社会でそれが“普通”になるのだとしたら、感覚はどんどん麻痺していくのだろう。それはおそらく、生態系が独自の進化を遂げたガラパゴス諸島のようなものだ。

家族の問題にとって、他人というのは一度限りの強い薬なのだ。

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