『温かな手』

石持浅海さんの作品。

大学の研究員として働いている寛子は、人間のカロリーを吸収することで栄養を摂っている謎の生命体ギンちゃんと同居している。一方、匠はギンちゃんの妹のムーちゃんと同居している。

寛子や匠の周りで起きる事件を、ギンちゃんやムーちゃんが解決していく。


心中かと思われた2人の死の真相がとても意外だった。

ギンちゃんやムーちゃんが事件を解決して終わりかと思ったら、きちんと寛子や匠との今後の関係についても触れられていて、良かった。

物語の終盤にタイトルの意味がわかって、とても良いタイトルだと感じた。


印象に残っている文

橘高さんの死因は、鋭利な刃物で胸部を刺されたことによるショック死だということだった。刺された瞬間は刃物自体が栓となって、出血は起こらない。刃物を抜いたときに起こる大量出血が原因で、ショック死するのだそうだ。

「よく知らないけど、最悪の風邪と最悪の二日酔いが一緒に来た気分らしいよ」

「やっぱり北西くんも男ね。女性が痴漢されたからといって、相手を殺すわけないでしょう? 痴漢なんて、殺すほど重要な存在じゃないんだから。むしろ『痴漢だ痴漢だ』と責めたてて、生き恥をかかせようとするわよ。怒った女は怖いんだから」

人間は混乱したりパニックに陥ったりしたとき、無駄なエネルギーを発生させる。使い途のない、ただ頭の中を引っかき回すだけのエネルギー。彼女はそれを吸い取ることによって、人間に理性を取り戻させることができるのだ。

正直、児玉さんが身の上話を始めたときはどうなることかと思った。男は、まるでワイドショーのような家庭の問題が、大の苦手なのだ。

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