『サード・キッチン』

白尾悠さんの作品。

主人公のナオミは、あしながおばあさんの援助によりアメリカに留学することができた。しかし、ルームメイトや日本人留学生と気が合わず、孤立しがちになってしまう。そんなときに、マイノリティ学生のセーフスペースである「サード・キッチン」という場所を知る。


アメリカの大学は日本の大学ではないようなイベントが多くあり、とても面白そうだと感じた。

尚美の高校時代の英語担当の村田先生の言葉が印象に残っている。

今度、自分の知っている物語を英語で読んでみようと思う。


印象に残っている文

自分の気弱さを、思いやり風味のオブラートに包んで飲み下すしかなかった。

私と同じくらい小柄なアンドレアの笑顔はとても大きい。あまりに大きくて、こちらまで飲み込まれて、朗らかになっていくみたい。

同じ部屋にいても、私と彼らの間には高いパーテーションがそびえていた。英語という名前の、無機質で得体が知れなくて、どこまでも続く灰色のパーテーション。

「英語に限らず言語学習というのは読書から入るのが一番いいの。おすすめは自分が好きな本の原書もしくは英訳本を何回も読むこと。日本語で読んだことのあるものなら、知らない単語があっても大意がつかめるでしょ」

「同じ議案はうちのコープ設立当初から、代が替わるたびに形を変えて、繰り返し僕たちに突きつけられてきた。パンフにも経緯と綱領は書いてあるのに、彼らは読もうともしない。読んで理解できなかったなら、僕らに直接問えばいいのに、それすらしない。ただ一方的に、“民主主義”って建前の数の論理を振りかざして『特別扱いは許さない。俺らのルールに従うべきだ』って言うだけなんだ」

同じ国、同じ地元に育とうが、同じ言語を話そうが、関係ない。この国のマジョリティは“他者”とみなした人を永遠に内側に入れない。同じ立場に立つこともない。一見フレンドリーな外面の下で、いくつもの“他者”専用マスクを用意して、決して素のままの、同じ人間として見てくれることはないのだ。ひょっとしたら本人たちさえ気付かない、永遠に消えることのない壁がそこにはある。

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