『フィッシュボーン』

生馬直樹さんの作品。

陸人、航、匡海の3人は中学の時に仲良くなった。大人になってからも密漁の仕事を一緒に行っている。ある日、大企業の令嬢を誘拐して身代金をもらおうと考えていたが、誘拐した令嬢が陸人のことを死なせてしまう。


陸人が死んでしまって驚いた。これからどうやって誘拐を成功させていくのかという話だと思っていたからだ。

それぞれの登場人物に悲しい過去があって、読んでいて辛くなった。

事件の真相が衝撃だった。


印象に残っている文

「俺はべつに、選択を限定させるつもりはないんだ。ただ、おまえらと一緒に真逆の世界を実現させたいっていうか」「真逆の世界?」匡海は首をひねった。「そう。たとえば、いま狭い場所にいるなら、明日は広い場所を見つける。いま差別とか意地悪な連中に囲まれているなら、明日は平等とか親切を重んじる人に会いにいく。いまの暮らしが辛いなら、明日は笑って暮らせるようにする。まあ、そんなイメージ」

航はふいににじんだ涙を、口の中の傷と坦々麺の辛さのせいにした。

いま思えば、きょうだいの絆、というものを過信していたのだろう。あの日突然の再会を果たし、ひと目で妹だとわかった。向こうも兄だと気づいた。その瞬間の、電流が音もなく駆け巡ったかのような感覚が、航は忘れられなかった。それに甘え、すがっていたのかもしれない。どんなに強い絆だろうと自主的に結びつづけなければ、いずれほどけてしまうというのにーー。

「親友ってのは、おまえが思う以上に万能なんだよ。どんな状況であっても、頼っていいんだ」

「想像力って悪いほうに働いちゃうと、本当に残酷なんだよ。その人がどんなふうに、どんな気持ちで死んでいったのか、いつまでも考えこんで、頭がぐちゃぐちゃになる」

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