『定年オヤジ改造計画』

垣谷美雨さんの作品。

定年退職を迎えて、家の中で過ごすことになった常雄。

しかし、妻の十志子や娘からは避けられるようになった。

ある日、常雄は息子夫婦から孫の保育園の送迎を頼まれるようになった。


主人公の「常雄」という名前も、常に男性的な考えで、女性のことを理解できていないということを暗示しているのかと思った。

時代とともに変わっていく価値観。

今は多様性の時代といったところか。

過去に取り残されたままになると、化石のような人間になってしまう。

自分が正しいと思っていることも、周りから見たらずれているかもしれない。

常雄の考えが段々と変わっていくのが、とても興味深かった。最後に息子の将来を思って、意見を言うところが立派だと思った。

印象に残っている文

「赤ん坊や幼児がいるだけで同窓会の雰囲気が台無しなのよ。ほかのみんなは『可愛いわねえ』なんて無理して微笑んじゃってさ、その引き攣った顔を見るのだって鳥肌もんだったわよ。八千円も払ってんのに、そんな演技まで強要される身にもなってみなよ。」

「母親になると、我が子が可愛いあまりにエゴもしっかり身につくものですよ。どんな経験でもプラスになると思ったら大間違いです」

「女は男の気持ちを理解しようと努めるけど、男は女の気持ちを考えようともしないんだよ」

イザという言葉で大切な何かを誤魔化してこなかっただろうか。「イザ」を振りかざし、面倒なものすべてから免除されてきたのではないか。「イザ」は免罪符だったのか。

人間関係というものは、元来こういうものかもしれない。たとえ家族でもあっても、誰かの我慢の上にしか団欒は成り立たないのではないか。

「女は結婚相手の家風に染まるために、料理も風習も習慣も変えさせられる。そのために、それまで持っていた価値観や習慣もすべて捨てなきゃならない。それをどう思うか、お前にできるのか、いっぺん真剣に想像してみろって、どえらい剣幕だった」

とにもかくにも相手に同意してみせる。すると相手は気を許して本音を少しずつ出してくる。それは、営業部にいた頃に学んだ心理作戦だ。

「専業主婦の友だちは、小さい子を抱えて家庭に閉じ込められて、みんな窒息しそうだって言ってます。人生に焦ってるんですよ」

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