『美しき愚か者たちのタブロー』


原田マハさんの作品。

以前国立西洋美術館を訪れたときに、「松方コレクション」という言葉を目にしていた。その時は何も思っていなかったが、まさか原田さんの作品で出てくるとは!
ヨーロッパで美術コレクターとして活躍した松方幸次郎と美術史研究科の田代雄一、松方コレクションの管理を任されていた日置。

参考文献と協力に記されていた本や団体の数が圧倒的に多くて驚いた。
吉田茂は松方コレクションをとても気にかけていたとわかって、少し親しみを感じた。

印象に残っている文

パリは緯度が東京のそれよりも高いので、南中高度、つまり太陽の上がる位置が低く、横から差し込む日差しがやたらまぶしく感じられるのだ。

戦後、外務省が抱えていた最大の課題は、戦勝国との対日講和条約を早期に成立させることであった。

一瞬一瞬が一生に一度しかない瞬間なのだ。この一瞬をおもしろく生きずして、おもしろい人生にはできぬ。

「でも、わかったかい、田代君? あの絵は、傑作だ。色がどうとか、理屈じゃない。モネが、あの大画家が、もうよく見えんのに、必死に絵筆を動かしている様子を見ていると、わしはなんだか、わけもなく泣けてくる。そうやって、画家がおのれの全部をぶつけて描いた絵を、傑作と言うんじゃないのか?」

それがなくても生きていける。それがなければ何かが変わってしまうというわけじゃない。けれど、それがあれば人生は豊かになる。それがあれば歩みゆく道に一条の光が差す。それがあれば日々励まされ、生きる力がもたらされる。


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