『古本食堂』

原田ひ香さんの作品。

滋郎が亡くなって古書店を引き継いだ妹の珊瑚と、滋郎の姪の娘の美希喜。さまざまな人が古書店を訪れる。

「美希喜」という名前に「いろんなものをよく見て、人の話をよく聞きなさい」と込められていると知って、とても良い名前だと感じた。

ボンディのカレーの描写がとても美味しそうだった。

本多勝一さん著『極限の民族』という本を読んでみたいと感じた。

印象に残っている文

中略 帯広から先月出てきた人が東京は千代田区のど真ん中で働くのである。

↑の文章は「東京の千代田区のど真ん中」であると思ったが、気のせいだろうか。

掃除ってする人はいつもちゃんとするし、しない人はしない。そして、たいがい、しない人は人にしてもらったことにもあまり気付かないものだ。そういう小さなことが少しずつ不満として溜まっていく。こういうことがわかり合えるのは、隣に住む上で結構、大きいのだ。

北海道の人は「東京はいいわねえ」と言う一方で、「でも今は北海道にもなんでもあるわよ」とも言うけれど、こういう場所は人口が多い土地でないと成立しない。

「いろいろ読みますね」表情とは逆に、彼の心のシャッターがしゃーっと閉じていくのをあたしは感じた。本は読む、だけど、きっとその書名を口にしても、この人たちにはわかるまい、そんな気持ちが「いろいろ」という言葉だけで伝わってきた。

東京は一人を優しく包んでくれる街だ。

人におもしろさを説明するほど、悲しいことはない。

「人生に必要な小説や本って、向こうからやってくるのかもしれませんね」

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