『しょうがの味は熱い』

綿矢りささんの作品。

作品の前半が「しょうがの味は熱い」、後半が「自然に、とてもスムーズに」という話である。

同棲するカップルのすれ違いが書かれている。

奈世の気持ちも絃の気持ちもどちらも共感できる。男性側としては絃の気持ちに共感する人が多いのではないかと思う。同棲という状態をできるだけ長く維持したいと思う気持ちもよく分かる。絃は奈世が実家に戻ってから、奈世の存在の大きさに気づいている。

奈世の両親はとても良い人だと思う。奈世のことを本当に大切に思っているのだということがよく分かった。


印象に残っている文

「例えば、絃のどこが好きかって言えば、掃除機のかけ方かな。男の人がこんなこと言われて喜ぶのか分からないけれど、絃は掃除機をとても丁寧にかけるでしょ」

彼の生活の基軸は会社で私生活は長めの休憩でしかない。本人がそれに気づいていないことは痛々しい。勤めるまえとは顔つきが変わってきているのに。

脳みそは息抜きがわりにつまらないことを忘れたりしでかしたりするらしい。つまり故意に軽いバグを起こして息抜きしているのだ。

食器洗い機と乾燥機が普及しない背景には“皿くらい洗えよ”と“洗濯物くらい干せよ”という日本人特有の意識があります。電化製品が発達してきたからといって、すべての過程を機械任せにするのは怠惰だという意識です。

金や物を貸すときに、自分の一部まで貸し出してしまった気がして落ち着かないのだ。

仕事へのやりがいや興味がなくても、会社には通い続けられるということを、ここ三年ほどで知った。

ようやく気づきました。絃は私が結婚後に得たいと思っている落ち着きを、結婚前に得たいのです。私が結婚という区切りをつけてから始めたいもろもろのことを、絃は結婚前からすることで、これからの生活が大丈夫だと確信して安心したいのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?