『御子を抱く』

石持浅海さんの作品。

埼玉県越谷市の住民は、八番街に暮らしていた星川を慕っていたが、星川は亡くなった。

その後、星川の盟友である江口が車に轢かれて亡くなったことをきっかけに、星川の後継者争いが始まる。


釜島の喫茶店の過去の話と、お店をどのように改善したかという話が興味深かった。

それぞれのグループが主導権を握ろうと、駆け引きをするのが面白かった。

深井は一緒にいて落ち着く人だと感じた。


印象に残っている文

売り手市場とは困ったものだ。能力の低い学生も内定をもらえてしまうものだから、中小には「いくら人手不足でも、こいつはいらない」といった学生しか入ってこなくなる。

相手に気を遣わせないコメントだった。さりげない気遣いを、ごく自然にできる人間。あるいは、自らの発言や行動を自分で茶化してしまう性格。

「最近の研究では、人工呼吸は必ずしも必要でないといわれています。その代わり、心臓マッサージを絶やさないことが重要なんです」

硫化水素の臭いは、わかりやすくいえば温泉の匂いだ。そして猛毒。簡単に人間を殺してしまう。けれど上手に使えば、人体に重要な役割を果たすのだ。

「私は、星川さんという人を知りません。でも、皆さんを見ていると、皆さんが本気で取り組むことについては、一切の否定をしないのではないか。そんな気がしています。だったら、今のままでいいじゃありませんか。みなさんは、たぶん世の中の圧倒的大多数よりも幸せだと思います」

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