『届け物はまだ手の中に』

石持浅海さんの作品。

恩師の益子を殺された楡井は、実行犯の江藤を殺す。楡井は江藤の殺害を報告しようと、かつての友人である設楽の家を訪れる。


読んでいて、ずっと引っかかることか多いと感じていた。

設楽が実は死んでいるという説を途中まで考えていた。

本当に最後の10ページまで結末が明らかにならないので、とても面白かった。


印象に残っている文

テーブルの傍まで行くと、遠野嬢がわざわざ椅子を引いてくれた。「すみません」本気で恐縮する。秘書というのは他人のフォローをするのが仕事なのだろうけれど、若い女性にそんなことをされては、普段何から何まで自分でやっている身としては、かえって居心地が悪い。

「美少女」と「美女の少女時代」は、似て非なるものーーそんな話を聞いたことがある。美少女とは、子犬のような丸っこさを伴う可愛らしさのことだ。だから往々にして、成長すると平凡な顔だちになる。一方美女は、細い分、幼い頃は貧相に見えるらしい。

楡井は、安心している自分に戸惑った。なぜ真澄が独身だと安心するのか。理由は簡単だ。男は単純でバカだから、美女が既婚者であるよりも、独身である方が嬉しい。それだけのことだ。

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