『一橋桐子(76)の犯罪日記』

原田ひ香さんの作品。

桐子は友人のトモと同居していたが、トモが病気で亡くなってしまい今は独りである。

桐子はやがて長く刑務所に入れられる犯罪を考え始める。


桐子の人柄がよく、助けてあげたいと思えるような性格だった。仕事をきちんと行っていると、自分に返ってくるのだと感じた。

万引きや詐欺、殺人などは遠い世界の話ではなく、本当に実行する覚悟さえあれば誰でも手を染められるということに改めて気づいた。

久遠や大家さんのように周りの人がとても良い人で、今後の桐子の生活を見るのが楽しみだ。

「兄貴」は桐子に殺人を断られて、今後どうなっていくのだろうと感じた。


印象に残っている文

やっぱり、人と話すのっていいな、と思った。自分一人だと、どんどん悪い方に考えてしまうけれど、正しい方向に導いてくれる。

「万引きは成功率の高いギャンブルなの。普通のギャンブル、競馬とか競輪とかは運営側に半分以上持って行かれるし、当たる確率も低い。だけど、万引はうまくすればほとんど捕まらず、必ず儲かる。だから、強い快感になってしまうのね」

「不思議ね。がんて忙しい時になるわけじゃないのね。その忙しさがいったん、落ち着いた時に襲ってくるのよ。だから、若くても、必ず、検査に行かなくちゃだめよ」

仕事も家も失う……桐子はその時、罪を犯すということの本当の意味を知ったような気がした。それは自分の信用をすべてゼロにすることなのだ。

人の死……特に、老人の死というのは結局、これまでの人生の答え合わせなのかもしれない。

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