『明日の子供たち』

有川ひろさんの作品。

恥ずかしながら、「児童養護施設で過ごしている=かわいそう」というイメージを持っていた。奏子が施設に入ってよかったと語る部分が印象に残っている。本人が今の状態をどのように感じているか、こちらが勝手に物差しで測ってはいけないと感じた。

施設を退所したあとに戻って来れる「サロン・ド・日だまり」のような場所はもっと必要だと思う。 先輩職員の猪俣はとても良い人だと感じた。子どもたちときちんと距離を引いて、叱るべきときにきちんと叱ることができる姿が素晴らしいと感じた。

こどもフェスティバルでの奏子のプレゼンは、ぜひ多くの教育関係者や行政関係者に読んでもらいたいと感じた。


印象に残っている文

「部外者の気まぐれな親切は躾の担当者からするとありがた迷惑です」

「やっぱり、家庭に問題のある子が多いから。虐待を受けてた子もいるし。いろんな形で大人を試すのよ。過剰に甘えてきたり、逆にすごく反抗してみたり。それに振り回されないようにして。わたしたちがいちいち動揺するのが一番よくない」

施設だから規則があるし、我慢しなくてはならないことはたくさんある。だが、子供の個性によって我慢の度合いが変わってくるのが悲しいかな現実だ。職員にも気遣いのできる「いい子」ほど我慢させることが多いのはやるせない。

「福祉と奉仕は違います。福祉は職能であるべきです。そうでなければ破綻します」

児童養護施設では新しい情報を取り入れるのに時間がかかる。職員が日々の業務に忙殺されて進取の気運がなかなか盛り上がらないのだ。常にぎりぎりの人員と予算で回っており、成立したシステムに変化を来すような動きを忌避する職員は多い。

「本を読んでよかった、と思うことがあったら、それが全部正解なの」

どの本を読めば救われる、なんてことは決まっていない。誰に何が響くかは読んだ本人にしか分からない。だから、どの本も大事にしなくてはいけないのだ。どの本も、誰かを救う可能性がある。

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