『原因において自由な物語』

五十嵐律人さんの作品。

人気作家の二階堂紡季には、恋人の弁護士想護が小説のプロットを書いているという誰にも言えない秘密があった。
そんなとき、事件が起こる。


本のページの書かれた位置が普通の本とは異なり、かなり内側にあると感じた。

「故意に恋する」というアプリを考えた人は、頭が良いと感じた。

紡季が不登校になった際に、父親も一緒に休んでいたという話が印象に残った。


印象に残っている文

手を伸ばせば届きそうな距離ーー。肉眼で見つめ合ったら視線を逸らしてしまうのに、ファインダーを通せば心地よい距離感に切り替わる。

「正論ってさ、正しさが通用する場所で使わないと無視されるんだ」

「煙草、吸ってませんよね」「副流煙専門です」

「多数派だとか、少数派だとか……、個性を否定して自分の普通を押し付けることに、何の意味がある? 他人が見ている世界を受け入れろとまでは言わない。でも、自分と違うって理由だけで否定することは許さない。今回の件で僕が言いたいのは、それだけだよ」

体質に合わないビールは、自白剤のように思考力を奪っていった。

「平等は、機会を与えることで、結果を保証することじゃない。機会の付与は、道筋を確保すれば足りる。自主的に勝ち取るから、権利は価値を帯びる」

「いじめって、人数制限があるウイルスみたいなものなんだ」中略「宿主が苦しんでる間は他者に感染しない。でも、宿主の免疫力が強くなったり、外部からワクチンを投与されると、次の感染先を狙い始める。表面的には解決したように見えても、ウイルスの保有者が変わっただけだった。そういうパターンを山ほど見てきた」

物語を書いているときは、世界が無限に広がっているような気がした。ううん。世界を無限に広げられるような気がした。だから私はーー、これからも自由な物語を紡ぎ続けよう。

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