『スクープのたまご』

大崎梢さんの作品。

週刊誌の事件班に配属された入社2年目の日向子。

最初は配属先のことをあまりよく思っていなかったが、だんだんと心境が変化していく。


休みもあまりなく、体力がかなり必要な仕事であることがよくわかった。特にカメラマンと一緒に張り込んだことが印象に残っている。

週刊誌の人たちは1週間ごとに毎回ネタを見つけて調査をして、ということをずっと続けているのがすごいと思った。

職場の環境として、女性が働き続けるのは難しいのではと個人的に感じてしまった。


印象に残っている文

それぞれの部署に散った同期たちとは、飲んだり食べたりの機会がたまにあり、よその話を聞くのは愚痴でもぼやきでも新鮮で楽しかった。

「身元不明のばらばら死体の調査と、文芸作家さんの書いた小説と、どこがどうちがうんだろうね。あまりにもかけ離れていては、いけないんじゃないかな。私たち編集者は、死体についての記事を書くときと、小説の原稿を読み込むときと、自分の中の、奥の奥に同じものを持ってなければいけないのかもよ。わかる?」

「え? 知ってるの? わかっていても来させられるんだ」「絶対ちがうと、確かめるのも仕事なので」

見ず知らずの町で、生まれて初めてのラブホで、顔だけ知っている政治家を待つ。思い切りの非日常のようでいて、目の前にあるそれは、日向子のよく知るチェーン店の慣れ親しんだ弁当だった。

「小説も週刊誌も現実をえぐる。ちがうアプローチでえぐる。なのに片方を捨てるってことは、えぐる力が半減するってことだ。出版社としてそれはどうかと、自分の不出来は棚に上げて、自分ですごく意外なことに思った。不安の正体はそのあたりじゃないかな」


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