『生まれ出づる悩み』

有島武郎の作品。


文学者になったものの、創作が進まず悩んでいる「私」。

漁夫になったものの美術の道を諦めきれない「君」。

好きなことをするには何らかの犠牲が必要となる。この作品を読んで、そう感じた。現代よりも自由に職業選択をできなかったからこそ、より好きな仕事に対する憧れがあるのだと思う。


印象に残っている文

機嫌買いな天気は、一日の中に幾度となくこうした顔のしかめ方をする。そして日が西に廻るに従ってこの不機嫌は募って行くばかりだ。

人間と云うものは、生きる為めには、厭でも死の側近くまで行かなければならないのだ。謂わば捨身になって、こっちから死に近づいて、死の油断を見すまして、かっぱらいのように生の一片をひったくって逃げて来なければならないのだ。

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