『あきらめません!』

垣谷美雨さんの作品。

都内から夫の故郷へ移住した郁子。ひょんなことから市議会議員に立候補する。


瑞恵の置かれた立場には、とても驚いた。

夫に失望する郁子の心理描写が、印象的だった。

スイスで女性参政権が認められたのは1971年という話を聞いて、思っていたよりも導入された時期が遅いと感じた。

郁子が今後どのような改革をしていくのか、とても気になった。


印象に残っている文

同居する長男の嫁はアラが見えて腹が立つことも多いが、年に一、二回しか帰省しない次男の嫁は愛想がよくて優しく感じるというものだ。

尋ねないわけにはいかない。義父は、周りに持ち上げてもらわないと生きていけない人だからだ。昔の男は本当に厄介だ。

屈辱感というものは経験すればするほど黒い物が腹の底に溜まっていく。そのことに気づいたのは二十代だった。そして、その黒い物は何の役にも立たないどころか、性格を歪めて卑屈な人格を作り上げる。だから自分の心からシャットアウトした。

言っときますけど、先輩も私と同じ鮫タイプですよ。鮫は泳いでないと死んでしまいます。先輩も遣り甲斐や達成感がなければ死んだも同然ですよ。

「その笑顔、ええがな。笑顔でおる練習した方がええわ。いっつも暗い顔しとるから他人につけ込まれて噂話をされるんだわ。何言われても楽しそうに笑っとったら、そのうちアホらしなって誰も何も言わんようになるよ」

夫を嫌いになるということは、知り合いの誰かを嫌いになるのとはわけが違う。これまでの人生が砂上の楼閣に思えてくる。体の芯を成していたすべての物が崩れ落ち、自分が頼りなくなって、立っていられなくなる気がした。

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