『蛇蝎のごとく』

 

向田さんの放送台本を中野玲子氏が小説化したものである。
昭和の話であるが、令和バージョンに変えても違和感のない作品だ。
もっとドロドロしてもおかしくないが、不思議と暗くはならない。
「人はなぜ不倫に走るのか」これは人間に突きつけられた永遠の命題であると思った。
 
印象に残っている文

「あの…」と、上擦った声で、「この部屋、予約、お願いします」「予約?」「今晩八時半……いや、九時になるな、九時から……二、三時間でいいんですが……」

「惚れてたら、イタリーだろうが韓国だろうが、どうしてパァーといかないの。君だけがニンニク食ってるわけじゃないだろ。ニンニクとニンニクが、ぶつかったって、こりゃねえ、マムシとマムシがかみ合うようなもんで、なんともないんだよ!」

「年寄りじゃあるまいし、いい若い者が、タクアン、歯の土手でしゃぶる奴があるか! タクアンてのは、食うとき、音が出るんだよ、バリバリバリバリバリバリ、遠慮しないでやれ!」

「夕刊てのは、ずいぶん、人助け、してるなあ」
「え?」
「夕刊のおかげで、ずいぶん沢山の男が、顔、隠すこと、出来るじゃない」

 
 
 
 
 


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