『イン・ザ・ヘブン』

新井素子さんの作品。

イン・ザ・ヘブン、つつがなきよう、あけみちゃん、林檎、ここを出たら、ノックの音が、絵里、幻臭、ゲーム、あの懐かしい蝉の声は、テトラポッドは暇を持て余しています、といった話が収録されている。


「イン・ザ・ヘブン」では、二人の話す天国世界の制度がとても興味深かった。その後の話の展開に驚いた。

「つつがなきよう」では、“人口総和理論”というのが面白かった。

「ここを出たら」では、リーダーとなった男性の的確な行動がすごいと思った。思いやりのある人だと感じた。

「絵里」では、将来の日本でこのような価値観が出てきそうな気もすると感じた。

「あの懐かしい蝉の声は」では、人間が実は高度なことをしているということに気づかされた。


印象に残っている文

「中略 図書館だって凄いのがあるんですよ、だって、物故作家って生きてる作家よりずっと沢山いるじゃないですか。だから、もう、シェイクスピアだろうが紫式部だろうが、天国で新刊、書きっとおしです」

人は。人の幸せを、祈る、生き物。だから、人は、人の幸せを祈り続けます。いつまでも。叶わなくとも。

……ああ……林檎は、冷蔵庫に入れるかどうか、結構微妙なものだよねえ。これがハムや肉ならば、夏場に放置すればすぐに傷んでしまう、だから、冷蔵庫直行なんだけれど、これがプラムやスイカなら、冷やして食べた方が絶対おいしい、だから冷蔵庫直行なんだけれど……林檎は、微妙だ。

けど、東京の空は……山がまったく見えないのに、どこまでも、区切りというものがないのに、べだっと、不思議な程、閉じ込められている感じがする。

料理というのは、食事を、“生命維持の為に必要な栄養素を補給すること”という、本来の意味から外してしまう、謎の行為だ。


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