『言霊たちの夜』

深水黎一郎さんの作品。
日本語をテーマにした短編集。
漢は黙って勘違い、ビバ日本語!、鬼八先生のワープロ、情緒過多涙腺刺激性言語免疫不全症候群といった作品が収められている。
漢は黙って勘違いと情緒過多涙腺刺激性言語免疫不全症候群が好きである。
同音異義語や日本語習得の難しさ、ステレオタイプのくさいセリフなどが作中に出てくる。
学生時代に勉強していたことと関連していたため、とても懐かしい気持ちになった。

印象に残っている文

ちなみに俺は野球には全く興味がない。赤の他人が投げたボールを赤の他人が棒で打つところを見て、一体何が楽しいのだろう。

日本語ワープロの黎明期には、三つのキーボードシステムが鎬を削っていた。一つは現在最もスタンダードなJISシフト、もう一つはJISシフトとの市場争いには敗れたものの、現在でも根強いユーザーのいる親指シフト、そして残る一つがこの山田シフトであった。

「だからお前はステレオタイプが好きなんだな、ということだよ。お前は必死に走る主人公の姿と、目に涙を湛えながら搭乗ゲートに向かうヒロインの姿を交互に見せられ、間に合うかどうかハラハラさせられ末に、間一髪間に合って二人が抱き合うシーンにスローなバラード調の曲などをかぶせられると、必ず泣くだろう?」

「お前らが大袈裟な言葉を撒き散らしながら、毎日のように強制している作りものの感動こそが、人間本来の感性の発露を、阻害しているということだよ!」


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