『推定脅威』

未須本有生さんの作品。未須本さんの作品は初めて読む。


未須本さんの経歴を見ると、「大手メーカーで航空機の設計に携わる」と書かれていた。飛行機の専門的な用語が多く出てくるので、すごいと思った。

神階が倉崎にした仕打ちを知って、上司にいてほしくない人だと感じた。

沢本にとって明るい未来を感じさせる結末が良かった。


印象に残っている文

「機体に何か不具合が起きると、官側はとりあえず民側に投げるわけ。それで我々は粛々と検証を行って、分厚い書類を作って、機体の設計やシステムには何も問題はありません、と報告するの。それで責任を押し付ける場所がなくなると、ようやく運用上の問題として検討されることになるんです」

飛行機は、機体の向いている方向(機軸)と機体が飛んでいる方向(経路)がかならずしも一致しない。この二つの差が迎角である。

「そう、ウェストが六〇以上だと、今のあなたみたいに、太ってるっていう先入観があるわけ。だからみんな五八って言うの。家電とかの価格表示のイチキュッパと同じ理屈。実際には過少申告してる人、多いと思う。でもね、問題なのは、あなたが自分の目じゃなくて数字で判断してるってことなの。仮に私がウェスト五六って偽ったとしても、多分あなたはそれを信じて疑わないと思うし、見るからに細いね、なんて言うんじゃない?」

「それじゃ、今のに関連してもう一つ。飛行機の初飛行は、何のためにあるのか?」中略「答えは、計器、特に速度計の誤差を調べることです。新規に開発した飛行機って、初飛行のとき、自機の正確な速度が解らないんですよ、計器が較正されてないから。それで、随伴して飛んでるチェイサーと、読み合わせをして、計器の表示と、実際との差を知る必要があるんです、特に安全に着陸するためにね」

「普通のワインと違って、シャンパンは製造する途中で、異なる年のお酒をブレンドするから、何年物、と名乗ることができないの。ノンヴィンテージって言うんだけどね」



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