『今日も町の隅で』

小野寺史宜さんの作品。以下の作品が収録されている。


梅雨明けヤジオ

逆にタワー

冬の女子部長

チャリクラッシュ・アフタヌーン

君を待つ

リトル・トリマー・ガール

ハグは十五秒

ハナダソフ

カートおじさん

十キロ空走る


特に好きな話は「君を待つ」「ハグは十五秒」「カートおじさん」である。

「君を待つ」では、自分が卒業論文を提出したときのことを思い出しながら読んだ。提出日はある程度の余裕を持って設定されているはずなのだが、いつの間にか期限が近づいていて焦った。

「ハグは十五秒」では、十五秒という時間が絶妙だなと思った。ハグをするとストレスが減るというのを前に聞いたことがあるので、ハグをしている人はとても幸せだなと思う。


印象に残っている文

全体的に、冴えない感じだ。炭酸が抜けた炭酸飲料。抜けたあとに残る甘ったるさもない。そんな具合。

「東京タワーに上れたら楽しかったろうけど。わたし、上から見下ろすより、こうやって下から見上げるほうが好き。そのほうが、何か、やってやろうって気になる」

「そんならさ、お前はなおさら女子を大事にしろよ。大事にしといて損はないから。母ちゃんを見ればわかんだろ? 結局、自分の味方になってくれんのは女子なんだよ。すべてのものごとは女子に始まり、女子に終わるんだよ」

提出期限が二週間先なら、まず十日は何もしない。残りの四日でどうにかなるだろうと考える。結局は、最後の二日でどうにかする。

それと。これも那美に教えてやろう。流してることに自分が気づかないほどのうれし涙って、あるものなんだよ。

子どものころ、自分は四十歳にならないと思っていた。四十歳の人たちのことは、初めから四十歳として生まれてきた人たち、のように見ていた。

「まあ、円満な離婚なんてないよね。そこを円満にいけるくらいなら別れない。」

おいしそうに酢豚を食べる四十歳女子はいい。何なら美しいと言ってもいい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?