『うたかた姫』

原宏一さんの作品。

劇団ゆうまぐれの団長が金を持ち逃げしたことにより、劇団は消滅の危機に陥った。残された劇団員で、演じる予定だった「うたかた姫」をリアルで再現することにした。実際に、歌姫となる人物を見つけ、柏駅前で路上ライブを行うことになった。


姫と亮太が曲を作る場面を読むのがとても楽しかった。亮太の仕事内容に興味を惹かれた。

猪俣の爺さんは原宏一さんの「ヤッさん」のような安心感があった。最後にあのような結末になってしまったのが、残念である。

カジや角谷のような、今まで何も貢献してきていないのにいいとこ取りをする人とは接したくないと感じた。

亮太と姫はこれから幸せに暮らしていってほしいと感じた。


印象に残っている文

ネット検索したら、持ち逃げ事件は、たとえ相手方を捕まえたとしても、金は借りただけ、と主張されたら簡単には立件できない。だから警察は、被害届の受理すら渋るらしい。

「ふつうの人は、SMってSのほうが強い立場だと思ってるけど、ほんとはMのほうが強いんですよね」主導権はあくまでもMが握っていて、Mが喜んでくれることは何なのか、Sがとことん忖度して尽くしまくっている。そんな倒錯した力関係が成立した結果、SとMの不可思議な関係が生まれるのだという。

「既存の人脈に頼っているようでは、新しい仕事はできんのだ。たとえ小さな縁であろうと、新しい仕事には新しい人脈を見つけてこそ第一歩を踏みだせる。要は、火つけ役はだれだっていいってことだ。一軒一軒は小さなボヤだろうと、ボヤも百軒まとまれば一気に燃え広がる。それでこそ、本物の成功ってやつが摑み取れるんだよ」

「人間なんてものは弱い生き物だし、ともすれば勇ましい嘘に引きずられそうになる。そんなときも、動じない理性と密かな善意を忘れずにいれば、おのずと思考も行動も変わってくる。その積み重ねの先に必ずや、やつらを封じ込める底力ぎ生まれてくる、とわしは信じておる」

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