『三人屋』

原田ひ香さんの作品。

ラプンツェル商店街にある「三人屋」では、長女の夜月がスナック、次女のまひるが昼にうどん屋、三女の朝日が朝に喫茶店を運営している。

夜月のぬか漬けキャベツとおにぎりを食べてみたいと思った。

酉一さんの話が印象に残っている。生の鶏肉をぜひ食べてみたい。

大輔が姉妹と二度駆け落ちした(結果として)ことの詳細を読んで、とても面白かった。


印象に残っている文

地中から掘り出した卵に水をやったら、怪獣になってしまったのを見たときの小学生のように、一度入ったらもう取り返しのつかない、逃れられない場所になりそうだった。

蕎麦やラーメンは、このうどんに比べたらいやらしいほど主張が強すぎる。欲が出過ぎてる。気取っている。そういう気負いが一切なく、そしてうまい麺。

噛んでいくと自分の中もどんどん透明になって、すべてがなくなって、気がつくと口の中の米とただ体だけになって、宇宙に放り出されるような。自分自身がニュートラルになるような。そんな味。

男も女も、自分が若いだけで価値があると思い過ぎている。

「結婚したり、彼女ができたりすると、男の人って簡単に変わるじゃないの。相手の色に染まるっていうかさ」「それ、女のことじゃないの。あなた色に染めて、とか言うでしょ」「女は口で言うだけよ。変わるのは男よ」

夜の男たちは、ほんの少し距離が近い。直接触ってくる、とかではない。ただ、これまで半径一メートル以内には入ってこなかった人が、半径七十五センチメートルぐらいまで入ってくる。

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