『CAボーイ』

宮木あや子さんの作品。

パイロットになるという夢を叶えるためにCAの中途採用に申し込んだ高橋治真。

CAとして採用されると2年後に希望職にキャリアチェンジができるため、パイロットを目指そうとしている。治真は同期と一緒にCA研修を受ける。


飛行機に乗っているときは「まさかこの飛行機が落ちるはずないだろう」と思っているが、いつ何が起こるかわからない。CAの方々は数多くの訓練を行って、お客の安全を守っているのだということがわかった。

事故を起こして母と離婚してしまった治真の父は、とても可哀想だと思った。自分が治真の立場だったら、悔しいしやりきれないと思う。

シューターを滑り降りるのは怖そうだと思った。


印象に残っている文

年を重ねるにつれ友達との距離が離れてゆく。社会に出ることによって形成される新たな人間関係にリソースを食われるのが一因なのだろうが、かつて毎日一緒にいた人間の近況を今は知ることもできない、その距離の遠さが少し寂しい。

しかし勤務を重ねていくと研修で習った内容だけではなく記憶力や要領のよさ、頭の回転の速さが必要不可欠であることも判ってくる。

学生時代はこんな話をするなんて思ってもいなかった。映画や音楽やおっぱいの話をしているだけでいつの間にか夜明けを迎えていたあのころは、一生落ち着きたくなどなかった。

CAは「飛行機が好き」「人の世話が好き」「給仕や配膳が並外れて得意」なだけでは就いてはならない職業だ。客に見える部分はそれだけかもしれないが、訓練では飛行機の機体の構造をはじめ、各部品の役割や名称、故障が発生したときの対処方法も教わる。客を守る立場の職業人として知らなければならないことだからだ。もちろん人命救助の訓練もある。急病人が発生した飛行機内に医者がいなかった場合、そのまま死なせるわけにはいかない。医療行為以外の、できることをする。その「できること」を咄嗟に行動に移せるよう訓練を重ねる。

保安検査場前のエリアはダーティーエリアと呼ばれる。対して門探通過後、搭乗までのエリアはクリーンエリアと呼ばれる。

会社や国に関係なく、国際的なルールに基づきCAはお客様(シート数)五十に対してひとりの割合で乗らなければならない。ファーストクラスの場合、お客様五人に対してひとり、ビジネスに関しては十人〜十五人に対してひとりの割り当てになる。

R5は右側通路の前から数えて五番目のドアのことで、トイレや壁に阻まれてCPから見えない。人に対する好き嫌いが激しいタイプのCPに嫌われている子がよく配置されがちなポジションである。

「あと、サービス業やなくてどっちか言うたら保安業務やねん、CA」

人がコミュニティや企業の中で立身出世するためには、どれだけ有能であろうとひとりでは無理だ。実力に加えて必ずコミュニケーション能力と上へ行くための梯子である人脈が必要になる。

答えたくない問いには笑っておけばだいたいの相手は黙る。

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