『夜の側に立つ』

小野寺史宜さんの作品。

高校の文化祭で結成された5人組のバンドメンバーに関する話である。

冒頭で主人公野本の友人壮介が溺れて亡くなってしまう。なぜ彼は死んでしまったのだろうか?

過去を遡りながら明らかになっていく。


「あのときはこんな感じの学校生活を送っていた」という記憶があっても、他の人からするとまた違った見方になる。

野本は本当に女性の運がなかったと思う。野本の淡々とした語りがとても面白かった。

印象に残っている文

ここは民主主義でいこう、と生徒会長の信明が多数決をとった。一対四で負けた。初めて民主主義を呪った。キューバへの亡命も検討した。

車に二人で乗っていながら、しゃべらない。よく言えば、夫婦だからそれができる。悪く言えば、夫婦だからそうなる。

例えば歩いていて、右に曲がるべきところをとっさの思いつきで左に曲がる。そんなことで未来は変わるだろうか。

友だちと一緒にいて勉強できるわけがないのだ。まず、人と一緒に勉強する意味がない。教え合ったりできるというのはきれいごと。できるわけがない。やらない。

高校も予備校も同じ。生徒というものはわからない。読めない。ある日突然おかしなことを言いだす。ありもしないことを言いだす。その生徒自身も得をしないうそをついたりもする。何故か。十代だから。そうとしか言えない。

「今は春休みだけどさ。どう? 学校は楽しい?」「それも普通」とあっけなく言われる。そう訊かれたらそう答えたくもなるだろう。仕事はどう? ぼちぼちです。と同じだ。意味はない。会話をしたという事実を残すためだけに交わす会話。

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