『楽隊のうさぎ』

中沢けいさんの作品。


引っ込み思案の中学生である克久は、吹奏楽部に入部する。

先輩や友人、教師に囲まれ、全国大会を目指す毎日。


心のスイッチを切って無心で過ごしたことは、誰にでもあるのではないか。

そういった経験を「自分の心を灰色に塗り固めるのが上手になった。」や左官屋に例える作者のセンスが素晴らしいと思った。


どの学校でも吹奏楽部が一番練習しているのではないだろうか。

朝から晩まで練習していて本当にすごいと思う。

中学校へ子どもを入学させた母親というものは、幼い子を育て終えた解放感が深いのは事実だ。安堵と解放感に、中学校への違和感が加わる。
吹奏楽の練習は堅固な煉瓦を積み上げていくようなものだと思っていい。
金管楽器や木管楽器はすぐに練習できるというものではなく、しばらくウォーミングアップをしなければならない。
ここに何か、一つでも余分なものを置いたら、ぷつんと糸が切れる。そういう種類の緊張感だった。
人の話は聞かない代わりに、自分の説教は長い。国語の先生で、祥子のクラスを担当していた。たぶん「聞く」と「話す」のうちの「話す」だけを勉強したのだ。
音楽というのはヘンなものだ。解らないという人には、ぜんぜん解らない。
何と言っても、制服と私服では、制服は負ける。同じ私服であったとしても、同い年の男の子と女の子では、女の子に男の子は負ける。


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