『そのときは彼によろしく』

市川拓司さんの作品。


中学生のとき仲が良かった智史と花梨と裕司。

それぞれに事情があり、三人は離れ離れになる。

今はアクアプラントショップの店長になった智史。

アクアプラントショップのアルバイトの面接に来た森川鈴音。

鈴音が現れたことで、物語は大きく動いていく。


智史の父親の言葉はとても温かく、心に刺さる内容だった。

タイトルの言葉が出てきたときに、とても納得した。

読んでいて、心が洗われるように感じた。


印象に残っている文

初めは出身校という絆にすがっていた彼らも、やがては自分に見合う友人を見つけ、教室という小さな社会の中の位階制を形作っていく。

「そうじゃないよ。『トラッシュ』っていうのはねえ、美しいものに付ける名前なんだよ」

『世界にはぼくらが知っていることの100万倍もの知らないことがあるんだって』『うそ!知らなかった』『ほらね』

「涙は心の表現だ。内なる感情の等値概念だ」

彼の気遣いは嬉しかったが、それはたとえば、九九ができなくて居残りさせられている生徒に、クリアした連中が帰り支度しながら「うん、7の段がきびしいのは確かだよね」と声をかけるのと同じで、実のところ、あまり慰めにはなっていなかった。

「いつでも、ぼくのことを過大評価しすぎるんだ」「そういうひとがいてくれるのって、幸せなことじゃない?」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?