『キャロリング』

有川ひろさんの作品。


子供服メーカーの「エンジェル・メーカー」は倒産が決まった。学童保育も事業として行っており、そこに通う小学生の航平の両親は離婚寸前である。航平は、「エンジェル・メーカー」の社員である大和と交流するようになる。

大和の過去の話を聞くだけで辛かった。航平の両親が出した結論は少し寂しいものだった。

赤木も決して根っからの悪人ではないとわかったので、同情してしまった。

赤木ファイナンスの面々が今後どのような人生を送るのかが気になった。


印象に残っている文

「お前には不幸の比べっこしても仕方ないでしょって言ってくれる人がいなかったんだな」

「ルックスがよくて性格がよくて共働きは必須だけど家事の分担は奥さんメインでやってほしい、お前が求めてるのはどこの時空の完璧超人だ⁉︎」

いい子だな、と思った。もったいないという言葉が物ではなく相手の気持ちにかかる。俊介の辞書にはない文法だった。

柊子は飴玉を口の中で転がしているような幸せな顔になった。

そして、自分の知識の範囲で話が展開すると人間の判断基準は甘くなる。自分の経験則に当てはまるように、無意識のうちに情報を歪めて聞くからだ。

「お母さんだって人間ですもの、傷つけられたら傷つけ返したくなるのは当たり前ですよ。子供だからって力が弱いわけじゃありませんもの。愛されてる子供さんほどお母さんを傷つける力を持ってるんですもの」

定番の言葉ばかりだが、定番だからといって気持ちにも定番があるわけではない。定番の言葉を書くとき、気持ちはいつも新たに寂しい。

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