『雨の降る日は学校に行かない』

相沢沙呼さんの作品。相沢さんの作品は初めて読む。

ねぇ、卵の殻が付いている、好きな人のいない教室、死にたいノート、プリーツ・カースト、放課後のピント合わせ、雨の降る日は学校に行かないといった話が収録されている。

「ねぇ、卵の殻が付いている」に出てきたサエとリツが、最後の「雨の降る日は学校に行かない」で再び出てきたことが嬉しかった。

「放課後のピント合わせ」で、主人公が最後に自分がしていた行動を客観的に見られるようになったのが良かったと思う。

保健室の長谷部先生の言葉が印象に残っている。学校に行く意味をサエに身近な例を挙げて説明する場面が、とてもわかりやすかった。


印象に残っている文

体育って、なんのためにあるのか、よくわかんない。そりゃ、運動のできる子はいい思いをするかもしれないけれど、大抵の子は、みじめな思いをするだけなんじゃないの。バレーみたいにチームを組む授業なんて、ほんとに最悪だと思う。失敗して、赤っ恥をかいて、みんなに舌打ちされて。あんなの、先生公認のいじめみたいなもんじゃん。

「うん。でもね、人間って、大きくなるの。身体じゃなくて、生きていく場所とか、人との関わりだとか、そういうのがすっごく大きくなって、収まらなくなっちゃうんだ。身体は勝手に大きくなるの。ぐーんと大きくなったら、なっちゃんは大きくなったぶん、外で生きていかないといけないんだよ」

ほんとう、ほんの数ミリでも眼の位置が離れたりすると、それだけでぜんぜん似ていない不細工なキャラクターになってしまうから、絵って不思議だ。

はじめてスカートを短くしたとき、自分が大人になれたような気がした。

どうしてだろう。なんでだろう。わからない。あたしにはわからない。だって、真由は校則を守っているだけだ。どうして、それだけで優等生ぶっているなんて思われてしまうんだろう。正しいことを正しくしているだけなのに。どうして。どうしてなの。

「世界はこんなに広くて、どこにだって繋がっているのに。ほんとうに、どうしてあたしたちは、小町さんたちを、狭い世界に閉じ込めようとしちゃうんだろう。本当にごめんね」

「学校で覚えることは、料理の食材と一緒なんだ。なにか食べたいものを作ろうとするとき、冷蔵庫が空っぽだと、なんにも作れなくなっちゃうでしょう。もしかしたら、使うことなんてないかもしれない。そのまま腐って使えなくなってしまうかもしれない。けれど、食材をいっぱい詰め込んでおかないことには、作れる料理は限られてしまう。だから、小町さんは食材を買ってきて冷蔵庫に入れる必要があるし、先生たちはその手助けをしてあげないといけないんだ」

「小町さんは、学校に行けないんじゃないよ。学校に行かないだけ。先生は、そういう生き方があってもいいと思う。本当は勉強をするのに、教室に閉じこもる必要なんてないはずなんだ。学校が世界のすべてじゃないんだよ。世界は、うんとうんといっぱい広くて、なにかを学ぶ方法も、人と繋がる方法も、学校の外にはたくさんたくさんあるんだ。どんな生き方を選ぶのも、本当は小町さんの自由なんだよ。学校に行かない生き方だってある。それが普通のことなんだ」

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