『お願いおむらいす』

中澤日菜子さんの作品。中澤さんの作品は初めて読む。

ぐるフェスに関わる人々の物語。清掃スタッフ、お客、出店したラーメン屋、ステージに出るアイドルなどさまざまな人々の視点から物語が進んでいく。


オムライスが出てくるのかと思ったら、そうではなかった。

がん宣告をされた人気漫画家の姉、その妹と父親の3人の話が一番印象に残っている。

師匠の作ったラーメンはどのような味がするのか食べてみたいと思った。

中村は最後に母親を故郷の奄美大島に連れて行って、本当に良かったと思う。


印象に残っている文

ふだんなら太一の三倍は喋る綾香がひと言も発さない。百の文句より千の罵倒より太一にはそれが辛かった。

添えられた写真は、確か最終面接のときに撮られたものだ。なにか熱帯の奇妙な植物でも踏んでしまったような、そんな顔をしていた。

「あなたたちは食のプロでしょう⁉︎ それがなんですか店をほっぽりだしてお客さんを置き去りにして! 食のプロならプロらしく食べもので勝負すればいいじゃないですか! 今のあなたたちは、ギタリストがギターで殴り合うようなもんだ! バットでど突き合う野球選手だ! あるいは締め技に帯を使う柔道家、もしくはライバルのネタ帳をコピーしてばらまく漫才師、じゃなかったら相手の的を持って逃げちゃうアーチェリー選手だ!」

「あとさ、あゆちゃん。キャロライナ・リーパーって知ってる?」「キャロライナ・リーパー?」「めちゃくちゃ辛い唐辛子なんだって。ハバネロの十倍の辛さ、なんと最高二百二十万スコヴィルだって」

疑心と暗鬼が手を取り合い、おれのこころのなかでワルツを踊る。


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