『サイレント・ブレス』

南杏子さんの作品。


南さんの作品を読むと、いつも医療従事者に対して尊敬の念を覚える。ときには患者から文句を言われ、病院内での人間関係も複雑で本当に大変な職業であると思う。なかなか難しいとは思うが、労働環境を少しでも改善してもらいたい。

次の言葉が特に印象に残っている。

「水戸君、もう一度言っておくよ。死は負けじゃない。安らかに看取れないことこそ、僕たちの敗北だからね」


延命治療をすることと、患者の意思を尊重すること。

終末期医療に向き合う医師の葛藤は私たちには計り知れないものだと思った。


印象に残っている文

「要領よくやれば、かーー」
昼間、青木に言われた言葉を反芻する。「認知症です」とか「癌です」とか、どうやって要領よく伝えればいいというのか。

大学病院では、要領よく患者相手の仕事を済ませ、多くの論文を書く医師が必要なのだ。

「平和な治療だけしてるとね、人が死ぬということを忘れがちなんだよ。でもね、治らない患者から目をそらしてはいけない。人間は、いつか必ず亡くなるのだから」

一般に病院では、新しい患者を受け入れるときに最も手間がかかる。同じ患者をずっと生かしておけば、病院側の労は少なく、空きベッドなしで安定した収入が得られる。

路上生活者など身元のわからない患者が病院に運ばれて来た場合、その患者が保護された地名などを名字にして仮の名前がつけられる。

膵臓癌の五年生存率は五パーセント、癌のなかでも最下位だ。

「水戸君、医師は二種類いる。わかるか?」
中略
「死ぬ患者に関心のある医師と、そうでない医師だよ」

「水戸君、もう一度言っておくよ。死は負けじゃない。安らかに看取れないことこそ、僕たちの敗北だからね」

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