『雨利終活写真館』

芦沢央さんの作品。

終活の一つとして、遺影の撮影を行っている写真館がある。

黒子ハナは、生前に祖母がその写真館を利用していて、祖母が残した謎を探るために写真館を訪れる。


それぞれのお話も撮影者の意図がこめられていて、とてもよかった。

確かにちょうどいい遺影というのは、なかなか存在しないと思う。
終活という言葉が世間に定着した中で、よい取り組みだと感じた。

4話は、依頼人の同伴者が浮気相手と思ったら、とても意外な結末だった。


印象に残っている文

人間を犬っぽいか猫っぽいかで分ける、というお題を出されなくとも顔を見て真っ先に抱くのが「犬っぽい」という印象だ。

「結婚するってことは、わたしは仕事を辞めた方がいいんだよね?」と訊くことは、相手にもう一度選択を迫ることを意味する。立ち止まらせ、これでいいのかと考えさせるようなことはしたくなかった。

伸雄の吐く嘘の匂いは濃厚で、おそらくきちんと正面から嗅いでいればすぐに気づくことができたはずだった。

「自筆証書遺言は、全文を自筆で書かなければいけませんし、たとえば日付を入れ忘れたりすると無効になってしまいます。」

「許したいなら、それはもう許しているのと同じだろう」

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