『帝国の女』

宮木あや子さんの作品。

テレビ業界で働く5人の女性の物語。


テレビ業界での「休み」の認識がすごいと思った。松国が閑職に回されたあとに穴埋めできる人材がいないため、最終的に松国が戻ってくるというのが笑えない状況だと感じた。

最終章で「焼肉屋なのに何でイカを食べているの」というツッコミが毎回入るのが面白かった。

マネージャーの片倉の過去が壮絶という言葉では収まりきらないくらい、壮絶なものだった。

同期会の誘いが来たときの脇坂の気持ちを考えると、超えられない壁があると感じた。


印象に残っている文

業界の外からは「華やか」と評されることの多いマスコミだが、裏側は泥の沼である。私はまだ二週間に一度、丸一日は休みが取れている。しかしバラエティ番組のプロデューサーやディレクターになると二ヶ月連続休みなしはザラで、二日以上のまとまった休みが取れるのは年末年始だけだ。

「松国さん、お若いのにしっかりしてるってうちの事務所で評判ですよ」「しっかりしてるフリをしてるだけです、それにもう若くありませんし」「そのフリさえできない若い子が多いんですよ」

テレビはバラエティと報道が視聴率と広告収入を稼ぐ。総合出版社は漫画と雑誌が売り上げと広告収入を稼ぐ。

しかし女社会でよく言われるとおり、子供を産んだ女と産んでいない女のあいだにはその二者を隔つ深い川が横たわる。更にその前段階に、結婚した女と結婚していない女のあいだにも川は流れているし、仕事をしている女としていない女のあいだの川も存在している。どちらが正しいというわけではない。言ってしまえばどちらも正しい。ただ、川の向こうは異世界というだけだ。

ベテラン脚本家がメインを務める全十一話のうちの、七話と八話。連続ドラマにおけるこのあたりの回は俗に「中だるみ」と呼ばれ、本編の大筋には影響を与えないエピソードを自由に入れられるため、比較的新人に担当させることが多い。

芸能界の裏方、スタッフとして働く人は、ある程度ミーハーじゃないと勤まらない。

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