『アルツ村』
南杏子さんの作品。
娘と一緒に夫のDVから逃げた主人公の明日香。明日香がたどり着いた場所は、認知症の老人たちが暮らすアルツ村であった。
認知症の種類について、こんなにも多くあるとは知らなかった。
だんだんとアルツ村の実態が明らかになるにつれて、怖く感じた。
認知症は高齢者だけではなく、若年層でもなるものだと知った。
高齢社会が進む中、いずれこのような施設ができてもおかしくないのではと感じた。
印象に残っている文
こちらですと、入居契約時の一時金が一千万円。利用料は一人部屋で七十万円、二人部屋なら八十五万円ーー。ええと、二人部屋は一人で利用したときの金額です。ご夫婦二人なら計百二十万円となっていますね。そうです、利用料は毎月の月額です。
つまり、目先の「作業」はこなせても、それぞれの仕事を順番に積み重ね、味噌汁という「ゴール」にたどり着くのが難しいのだ。鍋に入れる味噌の分量の見当がつかなかったり、鍋をコンロにかけたまま忘れてしまったり、できあがった味噌汁をどのような器によそうべきなのか判断できなくなったりする様子が見て取れた。
「病気の進行期間は十年。最初の三年は「時間」、次の三年は「場所」、最後の三年は「人」が記憶できなくなる」
介護を求める家族は、「あなたはいい子」「お手伝いするあなたは素晴らしい」と、ヤングケアラーの心に訴えかける。ヤングケアラーにしてみれば、自分の存在価値が家の中で肥大化する一方で、家の外では誰かに求められる機会を失っていく。結果、「家族のために時間を使いたい」と、一見、美談にも見える理由で学校を退学したり、仕事を辞めたりしてしまう。
「文豪プルーストは、マドレーヌと紅茶。修造さんは、おかきとほうじ茶かーー」
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