『崩れる脳を抱きしめて』

知念実希人さんの作品。

広島から神奈川に実習をしにきた研修医の碓氷が主人公である。碓氷は弓狩環という患者を担当する。碓氷は環に対してだんだんと恋心を抱く。ところがあるとき、碓氷は環が亡くなったと知らされる。

読んでいる途中に、私も碓氷と同様に騙されてしまったのではないかと思ってしまった。途中で院長や病院の人間のことが信じられなくなってしまった。ただ、全ての謎が解けてスッキリした。読後感がとても良く、また読みたくなる本だ。

印象に残っている文

医者が患者全員と苦悩を分かち合っていては心が壊れてしまうし、特定の患者に強い思い入れを抱いては不公平になる。

DNR、それは心肺停止状態になった場合、蘇生を行わず自然に逝かせてほしいという患者の意思表示だった。前もってその意思が確認できている患者に対しては、本人の意思を尊重して挿管しての人工呼吸や心臓マッサージは行わない。

「分かってます。人がいつか死ぬなんて子供でも知っていますよね。けれど、知識として知っているのと、本当に人が亡くなっていくのを見るのじゃ、全然違うんですよ」

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