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明日の君の記憶に僕はいない#5

#5  遥か彼方の未来の話

あれから数日、遥香の記憶は取り戻し、失いを繰り返していった
記憶の戻るトリガーは中々見つからず、反対に喪失のトリガーは次々と見つかった
1度記憶が戻ったからと言ってまた同じ行動をすれば戻るのかといえばそううまくはいかず、まったく効果が見られないという結果が残った
だがまだ希望はあった、戻るトリガーは見つからずとも、喪失のトリガーは見つかっているのだ
これから先できる限り喪失のトリガーを引かないようにし、遥香の記憶の定着を最優先にしていく、そうすれば、記憶が失われず、もしかしたら記憶が戻るかもしれない、奏汰はその小さな希望にかけたのだった

・遥香のストレスが限界に達する
・遥香の肉体的疲労が限界に達する
この二つのトリガーをできる限りひかせないようにする、奏汰にできることはそれだけだった
このトリガーを引かせないようにしていても、奏汰の心をえぐったトリガーが一つある
・何もしていてなくても起こる
このトリガーに関しては奏汰がどう頑張ろうともどうしようもなかった
最大限注意し、最善を尽くし、記憶がなくなった時に自分のこと最低限でもわかるように記憶がなくなった時用のメモを作った

そんな生活を奏汰と遥香は何年も続けていった、時には記憶が3か月以上喪失しないこともあった
徐々に遥香の記憶が定着し昔の記憶も戻ってきた時
二人は今…


ゴーン ゴーン ゴーン
大きく力強い鐘の音が響く
白いドレスを纏い、化粧をする後ろ姿に奏汰が話しかける
「ここまで来るのにずいぶん時間がかかったね、あの時は明日の君の記憶に僕はいないんじゃないかってずっと不安だったよ、でも、今は違う、今までも、これから先も、君の記憶には僕がいる、ずっとそばにいるからね」
そう伝えると化粧を終えた遥香は
「忘れちゃったなぁ昔のことは!だから、これからの未来の話をしよう、二人の新しい未来の話!」
冗談交じりに笑顔で言うのだった

End…









これはあり得た結末の一つである




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