ぼくたちは れびあーんが だいすきだ。 ~あるいは、ごく個人的なBPLS3 SDVX観戦記~

「試合を通して選手は成長する。」大の大人たちを捕まえて、こんな陳腐な言葉があるものか。e-Sportsのプロ達の中には時には年端もいかない若者もいるものの、数あるe-Sportsタイトルの中でも老舗のうちの一つ、BPLのプロ達の多くは仕事とプロ選手を両立する立派な大人達だ。成長だなんて、よちよち歩きの子供じゃないんだ。プロフェッショナルは、最初から完成された技を魅せてくれ。

BPLS3 SDVXのドラフト前。新たな12名の顔ぶれの中に一際目立つ長い髪。VOLFORCE最高値を引っ提げて現れた異国からの刺客。肩書だけを見ているうちはただ彼のプレイにワクワクするとともに、「Tradz入って”厨パ"組まねえかな」と身勝手な期待を抱いていた。

ドラフト会議で叶った望外の結果。インタビューに現れた"刺客"の姿は、山賊というより怪物というよりも言うならば幽霊、むしろ吹けば飛ぶような。緊張と言葉の壁で、彼の人となりを知りたいという期待はすれ違う。数字が示す力は十分、しかし心によぎるわずかな不安。

そんな最中にdropされた本人からのnote。

太平洋を渡って日本にやってきた彼の努力、戸惑い、不安が手に取るように分かる、一万と二千文字のモノローグ。頼りなげな影は消えない、けれどこれだけの覚悟をもってBPLに来てくれた彼。いつかその思いは結実してほしい。
もちろんBPLもスポーツだもの、前年優勝チームがコロッと敗退してしまうこともあるかもしれない、それは今の時点では分からない。でも、もしTradzが再び決勝の舞台にたどり着いた時。レビアーンが不安を振り切って皆の思いを背負い大将戦に臨むことができたなら。それは最高の「e-Sportsプロ選手の成長物語」なんじゃないだろうか。BPLS3 SDVXへの期待の中身が、音を立てて変わった瞬間だった。

シーズン開幕、迎えたTradzの初戦にいきなりのレビアーン登場。相手は、昨年チームを決勝に導いた再誕のエース。
BPLに加わって初めての試合でパーフェクトな出来を披露する人なんて僕は知らない、直近の例外1人を除いて。それを差し引いても、初戦への緊張が彼の手さばきをわずかに重くしているように見えた。試合を終えて検討をたたえあった後、ベンチに戻る前にどこかに消え失せてしまうのではないか、彼はまだ儚さをまとったままだった。

そんなレビアーンを信頼して1度となく大将に送り出すTradz、本音を言えば意外だった。連勝を続けポイントを積み重ねるものの、それに比例して自信をつけていく感じは無かった。勝者なのになぜか結果を受け入れられない、そんな表情と振る舞いに見える。
僕も僕で、レビアーンはまだ真価を発揮していないものと捉えていた。獲得ポイント数など正直時の運次第だ。他機種や過去のシーズン、立て続けに無敗の猛者と対戦する羽目になり思うようにポイントを取れない人もいた。あまり巡目にはこだわらない質だけど、ここまでのレビアーンは逆に”恵まれている”。そして5戦目、相手はKACで上を行かれた相手。"巡目"はともかく、戦績や実力を見れば遜色ない、ここが試金石だ。

聞けば、不幸な目のトラブルがあったらしい。それはともかくとして、3度目の大将戦は惨敗と呼ぶべきものだった。どうしてしまったのだろう?と思うべきか、もしくは、BPLに合わなかったと結論付けるべきなのか。かつてBPLの舞台に立ちながら、無念にも去っていった選手達の姿が重なる。肩を落とし、相手チームの選手に慰められる彼の姿に僕が向き合ったのは、試合が配信されてかなり後になってからだった。

それでもチームは彼を信じて、チームの浮沈がかかる最終戦も大将として送り出す。めちゃくちゃヤバい自選曲を相手にぶつけ、譜面とともに体を揺らしながら歌を口ずさむ、明らかに今までとは違う試合への臨み方。ともすれば霞んで見えていたレビアーンの姿に、VIVIDな輪郭が描かれた瞬間だった。セミファイナル行きを決めてチームのベンチに視線を送る様子は、これまでになく頼もしく感じられた。

船橋アリーナでTradzは準決勝で恒例の"御礼参り"を済ませ、決勝の舞台に辿りついた。大将戦で相手のエースを堂々と迎えうつのは、レビアーン、その人。
「成長物語」は結実を迎えた。レビアーンは間違いなくTradzの一巡目に、エースに成長した。決勝戦の試合の結果?それはどうでもいい、少なくとも僕にとって。彼も最後に己の強さを示したのは疑いがないことだし。

無論、SEASON3は彼と彼のチームにとって最高の結果ではなかった。SEASON4で彼の戦う姿が再び見られるか、それは舞台の有無と彼の気持ち次第、外からどうこう言う話じゃない。
でも、敢えて身勝手なことを言えば。今度はシーズン当初からチームを牽引し、今より更に上の結果を出してほしい。異界から侵略されっぱなしじゃ悔しいじゃないか。もしも、もしもそれが叶ったなら。。。やっぱり、彼の「成長物語」には続きがあったことにしよう。


読んでくださった方、ありがとうございました。もし読んでいたらレビアーン、勝手なこと書いてごめんね。素敵な試合を魅せてくれて感謝しています。

この後はちょっとしたメイキング、もしくは自分用のメモです。タグから内容を察してください。ご興味のある方だけ、どうぞ。

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