連続的に新規事業を生み出すための型(4/22イベントレポート)
大企業では新規事業にトライしても事業化・法人化に至らないケースが多いと言われています。
そのような中で、関西電力社では「起業チャレンジ」という制度を運用し、昨年はTrapol、今年は猫舌堂と、連続的に新規事業を法人化されています。
その秘訣を伝えるため、「企業が新規事業を創り上げていく社内の仕組み・制度作りと事業開発プロセス」をテーマに、スタートアップ支援と企業の新規事業開発支援を行うGOBが、関西電力の三宅達彦氏をゲストスピーカーに迎えてイベントを実施しました。
オンラインで実施され、約50名を集め大盛況に終わった当イベントをレポートします。
1.登壇者紹介
■ゲストスピーカー
関西電力株式会社
株式会社猫舌堂 COO 三宅 達彦 氏
2008年に関西電力株式会社(以下関西電力)に入社。
戦略を具現化するための組織・要員設計等を中心とした業務に従事。
ライフワークとして、空き家、交通弱者、途上国のエネルギーアクセスの問題等に取り組むなど「サラリーマン社会起業家」のキャリアパスを築く活動をしている。
そうした挑戦を評価され、関西電力の事業領域拡大につながる事業を募集する社内ベンチャー制度「起業チャレンジ制度」などの社内起業家育成・支援業務に従事。GOBとともに起業挑戦者に伴走。
伴走プロジェクトの一つである株式会社猫舌堂にはCOO(最高執行責任者)として経営参画し、経営管理、戦略実装およびオペレーション構築・運用等を中心に、猫舌堂と自身のミッションをシンクロさせ事業に挑んでいる。
■スピーカー
GOB Incubation Partners株式会社
創業者/代表取締役社長 山口 高弘 氏
社会課題解決とビジネス成立を両立させることに挑戦する事業支援を中心に、これまで延べ100の起業・事業開発を支援。
社会に対する問い・志を、ビジネスを通じて広く持続的に届けることに挑戦する挑戦者を支援するためにGOBを創業。
自身も起業家・事業売却経験者であり、経験を体系化して広く支援に当たっている。
前職・野村総合研究所ではビジネスイノベーション室長として大手金融機関とのコラボレーションによる事業創造プログラムであるCreateUを展開するなど、個社に閉じないオープンな事業創造のための仕組み構築に携わる。
内閣府「若者雇用戦略推進協議会」委員、産業革新機構「イノベーションデザインラボ」委員。
主な著書:「いちばんやさしいビジネスモデルの教本」(インプレス)、アイデアメーカー(東洋経済新報社)
■ファシリテーター
GOB Incubation Partners株式会社
取締役副社長COO 高岡 泰仁 氏
前職・凸版印刷では法人営業として入社し、その後、新規事業開発、事業戦略を担当。法人営業ではコミュニケーション課題に対するソリューション提案を中心に、全ての業界との取引を経験。その後、社内での新規事業として教育事業の立ち上げに参画し、初期の顧客開拓を担当。事業戦略では経営管理から戦略立案、組織改革や新規事業創出に向けた仕組みづくり等のあらゆる経営課題に対応。2019年からはGOB-IPに参画し、関西の企業の新規事業開発を中心に事業開発の支援と新規事業創出の仕組みづくりを行なう。また、新規事業創造のエコシステムづくりに着手し、多企業を巻き込んだプラットフォームを作り、社会価値と経済価値を両立した事業創造に取り組んでいる。グロービス経営大学院卒業。
2.キーノートスピーチ
独立起業家だけではなく、企業内起業家(イントラプレナー)を50以上支援してきたGOB社。その現場では、「どれだけ儲けられるのか」から「何のためにその事業を行うのか」という変化が起きていると語ります。
一般的に、「儲け」と「社会にとって良いこと」の両立することな難しいと考えられています。本当にそうでしょうか。儲けを追求する現代社会においては、様々な歪みが生まれており、限界を迎えつつあります。
これからは、「人や社会にとって良いこと」が持続可能なビジネスとしてどんどん生まれてくると言われており、実際に多くの企業が動き始めています。
「人や社会にとって良いことが儲けを生み出す」ことは頭でわかっても、どのようにすれば良いのか分かりにくい概念です。
日本に古来から伝わる弓道、剣道、茶道・・・などの「道(どう)」には『高解像度に「道」を突き詰め、大切なものを磨き上げる』ための型があり、日本人は「型」を得ることで高いアウトプットを生み出せると山口氏は言います。
そのため、GOBは「人や社会にとってよい」と「儲かる」を両立させるための事業開発を「型」にしました。
見識と業を両立させるビジネスモデルの型として、陥りやすい罠はを語っていただきました。
このビジネスモデルの型については、以下の記事に纏まっていますので、ご参照ください。
https://media.gob-ip.net/2019/06/14/step3-entre-sippainokata/
見識と業を両立させられる人物とは?
ここで言う見識とは、価値の自身の経験や価値観を起点にして、倫理=「人や社会にとって良いこと」を探究することを指します。
見識は革新的で非構造的である一方、業は論理的で構造的です。つまりこれらを両立させられる人物とは、革新的プロダクトを売れる確証をもって具現化できる人物=カオスと構造のハイブリットであることです。端的にいうとふざけているけど、超論理的である人物だと言います。
どうすればそんな人材が育つのでしょうか。
やること(What)ややり方(How)という形式知から始めると設計者を超えることができません。
なぜそれをする必要があるのか考えるための哲学(Why)とこれの次にこれをやるという連鎖的な構造である技(型)から入る必要があります。
ここに、世の起業家が哲学を積極的に学ぶ理由があるのではないでしょうか。
3.関電の取り組み
関西エリアでエネルギー事業に60年以上携わってきた関西電力。
メインであるエネルギー分野における社会課題に照らした新たなチャレンジをしてきました。
更に、地域に根ざした企業として貢献するため、非エネルギー分野の社会課題の内、社会インフラ、ライフデザイン、文化・エンタメ、農業・食糧という4つのテーマにも取り組むことを昨年取りまとめた中期経営計画に盛り込んでいます。
三宅さんが所属する猫舌堂は、ライフデザイン領域の事業となります。
こうした取り組みを担うのは約40人が所属する、新設されたイノベーションラボ。各事業部と連携して既存事業の改革や新規事業創出を推進しています。
本イベントでは、イノベーションラボのミッションである、イントレプレナー創出についてお話をいただきました。
アイデア創出から事業展開までのプログラムを20年以上前から運用しています。
アイデア創出チャレンジで広くアイデアを募り、その中からアクセラレーションプログラムを経て事業へブラッシュし、起業チャレンジ制度で役員にプレゼンをして通れば、会社の社長として立ち上げることができます。
2020年からスタディーツアーやイノベーションサポーターズクラブという新しい取り組みを加えた5つの取り組みを展開しています。
これまで9社立ち上げており、現在は4社が活動しているという実績がある関西電力社の取り組みの秘訣は、20年の取り組みを通じてイノベーションを生み出す社内文化が醸成されていることが大きいでしょう。
加えて、新規事業開発を構造的に理解するスタディーツアーや人材交流を推進するイノベーションサポーターズクラブなど、20年続く制度の裾野を広げ、より活発にするために常にアップデートしていることも大きな理由だと考えます。
更に詳しくは、こちらの記事をご覧下さい。
https://media.gob-ip.net/2020/04/20/interview-kanden-entre/
https://media.gob-ip.net/2020/04/21/interview-nekojitadou/
4.猫舌堂紹介
がん経験者や食べることにバリアを感じている方向けにデザインしたカトラリー(スプーン、フォーク)の販売や、同じ悩みを抱える人が集いつながるコミュニティを運営しています。
https://www.nekojitadou.jp/
5.GOB紹介
見識と業を両立させた見識業を生み出し続け、それにより社会がアップデートされる続ける状態を目指すというビジョンのもと、起業家チームが社会化された価値観をビジネスという形で具現化を支援します。
https://gob-ip.net/
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