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ウルトラヴァイオレット 5月18日~365日の香水

香水のバイアス~ボトルデザインとパッケージ
パコ・ラバンヌ(paco rabanne)のウルトラバイオレット(ultraviolet)にであったとき「思いがけずいい香り」と第一印象を持ったことを今でも覚えている。
楕円形のボトル、それを収めるパッケージはプラスチック、液体はネーミングを体現したようなカラー。
何もかもが、「逸れて」いて、きっと香りも「奇をてらった感じ」と想定していたのだ。
ボトルデザインやパッケージによるバイアスである。
実際は古臭くはないけれど、正当なバイオレットの香水だった。
この香りに、この家(ボトル)、この服(パッケージ)が合っているのだろうか?
といわれると合っていない、と今でも思う。
けれど、新作が次々リリースされる中、何かしら見つけてもらう、注目してもらうフックが必要だったのだろう。
しかもブランドはパコ・ラバンヌ、スペースエイジの旗手なのだから近未来的、宇宙的なデザインのボトルパッケージには納得感もある。

調香師はジャック・キャバリエ(Jacques Cavallier)
大活躍していた時代で多作な彼のワークの中でも香調の点では正統的な明快なヴァイオレット。斜に構えたり、逆手を行くような企てはせず、の良作。
私のこの人へのイメージとは少し異なる完成の形だった。
いまなら、クラシカルなスクエアなボトル、19世紀風のイラストを施したラベル、パッケージは極力シンプルに、そんな家と服で再登場願いたい感さえある。

ヴァイオレットが好き
文句なく、第一印象で「いい香り」と感じたのは、もう一つ、やはり私がヴァイオレットの香りが好きということにあるのだろう。
好きになった経緯は、研修生の時代に、調香技術ではなくアート性を鍛錬する目的で処方を組ませてもらった「源氏物語シリーズ」にある。
その中で女三宮の香りにローズとヴァイオレットを主香にした「花の破滅」と題した作品を仕上げたのがきっかけだった。
「花の破滅」は事実とは異なるけれどマリーアントワネットの香水につけられた名という俗説があった。彼女の愛した香りはローズとヴァイオレットであったことから、二人のプリンセスの破滅の物語を同じ香りで重ねたというコンセプトだった。

ultraviolet/paco lavenne/1999
スパイシーノートとヴァイオレット香気がトップから立ち上がって、それなりに主張してくる。そこからさらにヴァイオレットはローズやジャスミンを伴って拡散していく。やがてアンバーやヴァニラと落ち着いた甘さと共にラストノートに移行するけれど、それも相変わらず真ん中にヴァイオレットがある。マリンノート全盛の時代に、大胆な挑戦であったと思う。
ボトルとパッケージのバイアスで、見過ごしていたけれど、大事にしたい香水の一つ。香水を見た目で判断してはいけない。

香り、思い、呼吸
5月18日がお誕生日の方、記念日の方おめでとうございます。

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