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ジャスミン1965 6月9日〜365日の香水

600万個のジャスミン
1キロのジャスミンアブソリュート(溶剤抽出で得た香料)のために600万個の花が必要という。昔は豚や牛などの獣脂を板状にした上に花弁を並べ、何日もかけて新しい花弁に取り替えながら獣脂に香りを移していくやり方で香料を摂っていた。
獣脂の代わりに、有機溶剤を使うようにはなったけれど、ジャスミンの香料を得るにはとにかく手間と時間がかかるのだった。
高さも1.5メートルほどにしかならないので、花を摘むのも重労働。

裏社会のジャスミン
19世紀、香水といえばシングルフローラル、一種類の花の香りを主にしたものが大半だった。ローズ、ヴァイオレット、ヘリオトロープ、そしてジャスミン。
いずれも天然香料で高価であった。
にもかかわらず、19世紀後半、これらの香りに棲み分け現象が起こったという。
ローズやヴァイオレットの淡い香りは良家の子女、ジャスミンやムスクなどの濃厚な香りは女優や高級娼婦などいわゆる裏社会の女性が好んで使うようになっていたという話がある。
この話には、うなづける部分もありつつ、高価なジャスミンが一時期でも裏社会の香りのようになっていた実態や根拠はもう少し調べる必要があると思っている。

1960の合成香料、1965のジャスミン
19世紀後半から開発の始まった合成香料、1960年には、ジャスミン様の香気を持つへディオン〜hedion(フランス読みはエディオン)が開発された。
エレガントで穏やかな澄んだ感じのある花香は私も好きな合成香料の一つ。
このヘディオンにより、ディオール(Dior)の「野生の水オーソバージュ(eau sauvage)」が1966年、世に出る。
ル・ガリオン(le galion)の古いコレクションのジャスミン(jasmin)をムエットにとった時、真っ先に感じたのがヘディオンだった。
後で調べるとこれは1965年のリリースだった。いち早くヘディオンを用いた香水だったかもしれない。

jasmin/le galion/1965
ル・ガリオンのシングルフローラルは、前に紹介したlily of the valley(リリーオブザバレー、谷間の百合、スズランのこと)といい、繊細であり優美さがある。
このジャスミンも、香りの女王としての強さよりも、やんごとなき方々にも愛された高貴なイメージ。数多あるジャスミン香水の中で、稀有な存在。
その芳香があらゆる他の芳香とも調和する優秀さを感じさせる。
華を供えつつ麗しい。そして、凛々しさのあるジャスミン。

香り、思い、呼吸。
6月9日がお誕生日の方、記念日の方おめでとうございます。

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