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スイート 2月20日~ 365日の香水


自然回帰と近未来思考
1960年代後半から70年代前半というと、一つはベトナム反戦から生じたエコロジー、ヒッピー文化がファッションにも波及した時代だった。
ジーンズや長髪、フォークロア、自然回帰の概念で女性のノーブラなどファッションのユニセックス化も進んだ。
一方で、「スペースエイジ」と言われる近未来的なファッションが誕生した時代でもある。ミニスカートやパンタロンとよばれるパンツルック、ブーツ、ビニールやメタリックな異素材を使ったものが特徴で、御三家としては、ピエール・カルダン、パコ・ラバンヌ、そしてアンドレ・クレージュ。
性別から解放されたファッションのムーブメントの一方で、ミニスカートがクレージュによってオートクチュールで取り扱われてもいたという面白さ。
けれど、この時代のミニスカートは女性性のアピールというより未来性の象徴だったのかもしれないから、過去を葬ってということでは共通しているのかもしれない。

クレージュのフレグランス〜クレージュそのもの
あらためてストックを整理していくと、意外にもクレージュのフレグランスがカルダンやパコラバンヌよりも多くあった。
この香りもそうだけれど、クレージュの大半のフレグランスはボトルデザインが統一されている。
球体のキャップに円柱形、又は多面体のボディ。これはクレージュが円や長方形をフォルムに使ったことに由来している、“クレージュらしさ”の表現と私は考えている。
今のニッチフレグランスがエコノミックな理由でボトルとパッケージデザインを同一規格にしているのとは違って、「これがクレージュ」の表現なのだと思う。
ロゴマークといい、ファッションそのものといい、そしてフレグランスラインのボトルデザインといい、60年代半ばにデビューしたアンドレクレージュが、まさにデジタライズされた規格化の時代をそのデザインに先取りしていたことがよくわかる。
すべては「クレージュ」という記号化された世界の中の楽しい遊びなのだ。誰もが心躍るようなピンク、水色の色彩にそれが現れている。

sweet coureeges leger/1993
スイートクレージュ、ライトの名の通り宮廷やブルジョワ社会で軽やかな香りが受け入れられていた時代を想起させる。ほんのり甘い、というのは人の心を落ち着かせ、優しい感情を自身の中から呼び覚ます。
デジタルな社会、近未来を表現してきたメゾンの香りがアナログに回帰したような組み合わせの妙。

香り、未来、呼吸

2月20日がお誕生日の方、記念日の方おめでとうございます。


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