獅子座の女、皆殺しの天使 8月19日~365日の香水
8月はナポレオン、フランツ・ヨーゼフ、ウォーホールなどリーダーや革新者の誕生日が続いた。
今日は、ガブリエル・ココ・シャネルの誕生日だ。
獅子座の女
シャネルの有名な自伝の一つには「獅子座の女 ココ・シャネル」という翻訳のタイトルのものがあるし、シャネル自身も「獅子座」であることを気に入っていたのか、コスチュームジュエリーのアイコンにライオンを使っている。
「私は自分の人生が気に入らなかった。だから自分でつくった」というようなことを言っていたけれど、「獅子座」は、持って生まれたものの中で気に入っていたことのようで面白い。
確かにシャネルには獅子座が似合う。攻撃的で孤高で、強いというライオンのイメージは彼女そのもの。
皆殺しの天使
愛人に連れられて出かけた競馬場で、女たちの奇妙な形の帽子が頭にきちんと収まらないことに”苛立った”シャネルは自分好みの帽子をデザインし売ることを始める。これが当たってやがてファッションデザイナーとしてライジングしていく。
コルセットで締め付けた細いウエスト、夥しい数のボタンを使用人にとめたり外したりしてもらわないと脱ぎ着できないような過度な装飾、金庫をぶら下げているような悪趣味な宝石、一切合切の19世紀的なものを葬りさり、新しい時代に女性たちを搔っ攫うように連れて行った。
これが「皆殺しの天使」と呼ばれた所以だ。
香りについても同じ。薔薇やスミレの花の香りをまとっていた女性たちに、
「女性が花のように香る必要はない」として、近代科学の恩恵である化学合成香料アルデハイドを大胆に用いた「これまでにまったくなかった」香水を創った。不思議なことに、アルデハイドには「人肌」のような感覚があるので、シャネルが大事にしたかった「優雅で官能的で清潔な香り」には事実最適な選択だった。
時代、先駆者、恋人たち、様々なピースが彼女を伝説にした
先駆者であるポール・ポワレの存在、第一次世界大戦による物資の不足、様々な恋愛遍歴の中で恋人たちがもたらした異国の文化や男性社会の文化、いろいろなピースが揃いながら最後に、負けず嫌いでアグレッシブな、卓越したセンスを持つココ・シャネルという女性がピタリとはまった。
伝説の始まりであり、伝説の隆盛だった。
Chanel NO.19/chanel/1970
調香師はアンリ・ロベール(Henri Robert)。
1954年にモードに復帰したあと、新作香水というのはシャネルにとっても大きな宿題だった。ついにGOサインが出たのがこのNO.19 で、獅子座、誕生日にちなんでNO.19 と命名したという。
香りのタイプは、パルファン濃度は明確なグリーンシプレーだけれど、オードトワレ濃度はグリーンタイプと言っていい。
自然の草木を思わせるグリーン、もちろんパルファンシャネル社のこだわりのローズやジャスミン、少しスモーキーな感じがあるのはモッシーノートとウッディノートから。
獅子座の女のグリーン
いわゆるグリーンタイプのナチュラルで万人受けという香りではなく、「性別を意識しない!」「ありのままの自分への誇り!」のような強い意思とその分いささか、厄介さも感じさせる香り。
主張のあるグリーンタイプなので、確かに「獅子座の女」以外には難しいのかもしれない。
香り、思い、呼吸
8月19日がお誕生日の方、記念日の方、おめでとうございます。
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